「男のきもの・織のきもの−大人の男のきもの談義

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No.39 長根英樹   2000.08.30 08:47 
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メールマガジン - No.0013 -2000.08.30 号
 1 更衣 〜 羽織と長着の追いかけっこ
 

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
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       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.08.30 No.0013  配信数:0322  
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 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 更衣 〜 羽織と長着の追いかけっこ
 2 その他

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 1 更衣 〜 羽織と長着の追いかけっこ

 7月は夏休みをいただきまして2ヶ月ぶりのご案内となります。
 米沢も日中は暑いのですが夜は大分涼しくなり、ススキやコスモス、
 赤トンボに虫の音と秋の気配が感じられる頃となりました。
 北国の秋は駆け足でやってきますので、そろそろ頭の中は、単衣、
 袷もののコーディネイトに向かっています。

 さて更衣。
 通常は四季の分類で語られることが多いかと思いますが、24もの
 季節の移り変わりを感じる繊細な感性を持つ先人の技、しゃれ心の
 蓄積をベースにするきものですので、もう少し微妙な着分けを楽し
 む方向もあろうかと思います。

               ◇

 季節感は、羽織、長着の他に、帯、袴、半襟、襦袢など様々なアイ
 テムで総合的に表現して楽しむものですが、ここでは羽織と長着の
 取り合わせについて考察。

 お稽古事などでの着用ではなく、個人として自由に装いを楽しめる
 立場での着用であれば、(体調や地域、その日の天候などにもより
 ますが、)8月中はもちろんですが、9月に入っても絽や紗、粋紗
 等の“薄もの”の長着&羽織の取り合わせでよろしいかと思います。

 その後、暑さも落ち着いてきたら長着を単衣にし、羽織はしばらく
 の間薄ものでコーディネイト。
 やがて、羽織も単衣ものとして、単衣長着に単衣羽織の取り合わせ。

 袷の季節も、最初は長着を袷とし羽織は単衣ものをコーディネイト。
 その後、袷長着に袷羽織の取り合わせ。

 長着が一歩先に、羽織が後から追いかける形になります。

 かつては、真冬に綿入れ仕立てがありましたので、この際も同様な
 形で。

 春になり単衣への移行となると、今度は逆に、羽織が一足先で長着
 が後から続く追いかけっこに。

 まず、袷長着で羽織から単衣ものに。
 その後、単衣長着と単衣羽織の取り合わせ。

 暑くなるとまず羽織が薄ものとなり、単衣長着と薄もの羽織の取り
 合わせ。
 夏には薄もの長着と薄もの羽織の取り合わせ。

 この様に、更衣は決して年を4つに分ける様な杓子定規なものでは
 なく、羽織と長着との追いかけっこで微妙に季節の移ろいを調整し
 ながら、心地よく装う工夫が詰まったもので、更に奥深い季節感の
 表現などもあります。

               ◇

 羽織と長着の関係を考えると、長着に対して羽織はまさしくはおる
 もの、重ねて装いと整える上着となりますので、紬の長着に御召の
 羽織など、格という意味では羽織が勝る取り合わせとなります。
 (時に、羽織をコート感覚で装う場合もあり、羽織二枚襲の上羽織
  など、防寒視点で合わせられる場合もあり得ます。)

 これとは別に更衣という視点で見ると、羽織と長着は同種となるか、
 あるいは羽織の方が薄くなります。
 (薄ものの長着に単衣の羽織や、単衣長着に袷羽織となると、ちぐ
  はぐな印象となります。)

 この意味で、春から夏には羽織が先で長着が後からの追いかけっこ。
 秋から冬には、長着が先で羽織が後からの追いかけっことなります。
  
 この関係は羽織に限らず、基本的には袴においても同様となります。
 (現在、袴はほとんどが単衣仕立てで袷袴は身近でないことと思い
  ますが、単衣袴から薄もの袴:絽袴、紗袴への移り変わり、逆に
  薄もの袴から単衣袴への移り変わりの際に羽織同様の移行となり
  ますので、参考になるものと思います。)

               ◇

 これらを踏まえ、例えば今の装いを考えると、まだまだ暑いので、
 薄ものの長着に薄ものの羽織の取り合わせでよろしいかと思います
 が、一口に薄ものといっても透け具合には様々なものがありますの
 で、9月の残暑ということで長着は透け具合の控えめな絽や粋紗に、
 羽織は涼しく透け味の大きな紗に、などという形で薄ものの着分け
 を工夫しても楽しいことかと思います。
 
 (更衣には様々な意味合い、捉え方があります。
  お稽古事などで、日にちを決めて当日の天候にかかわらず一斉に
  装いを替えることも、集団における固有の美意識の共有になろう
  かと思いますので、意義あることと捉えます。)

 
 ここで、一般に絽は透け具合が少なく、紗は透け味が大きい、羅は
 更に大きく透けると捉えられますが、同じ絽織り、紗織りでも様々
 なバリエーションがあり、透け具合、トータルな印象も様々ですの
 で、織りの分類名にとらわれることなく、実際のきものの表情をみ
 てコーディネイトを考えるのがよろしいかと思います。

 例えば、紗羽織といっても糸に節の大きな真綿紬糸を用いた凝った
 織物もあります。
 これなどは真綿紬糸のふっくら感、大きな節で透け味が薄れること
 などから、同じ紗羽織でも盛夏というより、単衣の始まり、終わり
 が似合うものになろうかと思います。

 また、実際の気温はまだまだ暑い9月後半、薄ものの羽織を着たい
 が、体感温度だけでなく変わりつつある自然の様子も踏まえどこか
 秋のニュアンスも取り入れたい… かつては、こんな気持ちを表現
 する織物もありました。
 特殊な撚(より)によって細かいヒゲを表現した“カール撚糸”を
 一部に織り込んだ絽織物で、「カール絽」などと呼ばれていたもの
 ですが、夏にきもの着る方が少なく、特にこの様な微妙な季節感の
 着分けを楽しむ着道楽人の需要が少なくなったせいか、最近はなか
 なか見つけることが出来ません。

 少数ながら、現在でもこういった趣のある織物を求める需要も存在
 するものと思いますので、これなどは、前回(No.0012 号にて)
 ご案内した「ネットによるユーザーニーズの集約から復刻版制作」
 という様な、ユーザーとメーカーのマッチングが重要になる部分と
 思います。

 日頃の着用体験から、現在はなかなか見つけられないきものでも、
 こんなものがあったらいいなと思う様なものがありましたら、是非
 「大人の男のきもの談義」のコーナーにご投稿下さい。
 みなさんのご要望、一つのアクションがきっかけとなり、ユーザー、
 ショップ(流通)、メーカー3者の交流、あらたな関係が模索され
 きものの楽しみ環境が高まっていくことを期待しています。

 「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
  ・大人の男のきもの談義
    http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html
 

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 2 その他
 
 きものの世界のユーザー、流通、メーカーの関係。
 メーカーはあまりに流通への依存を高めたために、ユーザーニーズ
 の把握の面で大きくミスマッチが生じている可能性があります。

 男のきもの、凝ったきものなど、本当にニーズがないものなのか。
 少ないながらも底堅いニーズがあり、うまく繋ぐことにより生産の
 サイクルが回るものなのか。

 ユーザーが声を出し、要望を出すことで少しずつ動き始める可能性
 もあります。
 ネットはそんなユーザーの要望を集約してアピールする絶好の舞台
 だと思います。

 真の意味でのネット活用。
 ユーザーの立場でも、流通、メーカーの立場でも、この模索が重要
 になるものと思います。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

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