「男のきもの・織のきもの−大人の男のきもの談義

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No.45 長根英樹   2001.02.08 00:33 
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メールマガジン - No.0017 -2001.02.08 号
 1 衿元の美意識 〜 覚悟の解放
 2 袴の仕立てにご注意を
 

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
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       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2001.02.08 No.0017  配信数:0350  
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 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 衿元の美意識 〜 覚悟の解放
 2 袴の仕立てにご注意を
 3 その他

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 1 衿元の美意識 〜 覚悟の解放

 前号にて、
 “きものを通じて温故知新。きもの心、和の心という精神面の魅力、
  奥深さを共に探っていく中で、新たな時代の希望や価値観を見出
  して行きたい”
 との形で、新年新世紀のご挨拶を申し上げましたところ、熱い想い
 の共感メールを頂戴いたしました。

 単なる表面的な“きもの振興”ではなしに、精神面からの“きもの
 ルネッサンス”、すなわち日本の国として、また一人ひとりの心の
 あり様の面で「凛とした気概、繊細な感受性、慈しみやさしさなど
 和の伝統的な精神基盤」を復興再構築することこそが大事であり、
 これが真に豊かにきものを楽しむことにも繋がる。
 この様にあらためて実感すると共に、意を強くしたところです。

 今後、きものに宿る心の面の魅力という意味でいくつかの観点から
 考えをご紹介していきたいと思います。
 みなさんにも、様々な視点からの捉え方をお寄せいただければ幸い
 に存じます。

               ◇

 今号は、きものの衿元に見る美意識について。

 装いの和洋を問わず、衿元は各スタイルにおける一つの要点となり、
 基本的な価値観や美意識が表れる部分になると思います。

 スーツスタイルにおいても、シャツの襟(襟腰の高さ・襟の大きさ・
 衿先角度・襟開角度・襟パターン等)、タイ(幅・結び方・結び目
 大きさ等)、ジャケット衿(合わせ位置・襟開角度・襟パターン等)
 をトータルバランスで見た「Vゾーン」ということで、色柄素材感
 も含めてお洒落のポイントになっています。

 もっと遡れば、中世貴族の襟ファッションが究極の形に行き着いた
 例として、「ラフカラー」=円形(ドーナツ状)の白い襞襟(ひだ
 えり)による装飾を見ることも出来ます。
http:// www.suntory.co.jp/ sma/ japanese/ collections/ l_2-2.html

 この他、イギリスジェントルマンは週末のノータイスタイルにおい
 てもアスコットスカーフを巻いたり、タートルネックを着たりして
 首を露わにしないこだわりを持つともいいます。

 クラバット、タイ、スカーフ、カラーと様々な呼び方、形状があり
 ますが、西洋、殊にイギリススタイルの衿元装飾は一貫して“隠す、
 飾る”という特徴が見られると思います。


 これに対してきものの場合は、一貫して首を露わにしたV字衿スタ
 イルが基調になっています。
 気候的な要素もあろうかとは思いますが、真冬においても同様です
 ので、別の要素を考慮する必要があると思います。

 衿元、首が身体防御において非常に重要な意味を持ち、精神的な面
 でもある種の支柱となるのは、和洋を問わない人類共通の真理で、
 それ故、西洋では“隠す、飾る”という形で防御、士気昂揚の潜在
 ニーズが衿元スタイルとして顕れて来たのだと思います。
 一方、日本においては何故、あえて一見無防備にも衿元、首を露わ
 にしたスタイルが確立し得たのか。

 「襟を正す」「首を洗って(来た/待つ)」等という言葉から推し
 量るに、日本の場合は、己の来し方生き様に筋を通し自信を持ち、
 憚るところ無しの気概を持つことで、「いつ何時であっても堂々と
 首を差し出せる」という覚悟により防御、支えを図るという価値観
 から、V字に解放する衿元スタイルが生まれ確立したものと考える
 ところです。

 片や隠して守り、一方では露わにして逆に問う。
 抽象的になりますが、「覇道」と「王道」のスタイルの違いも見い
 出すことが出来、新たな時代に目指すべき価値観もほの見えて来る
 気がするところです。

               ◇

 スーツスタイルの場合は、己の精神状態に関わらずネクタイを締め
 ることによって着こなす(形を取り繕う)ことが出来る面を持つが、
 きもの、和装スタイルの場合は、衣装だけではスタイルが完結せず、
 装う人の精神(覚悟)が揃って初めて着こなすことが出来るもので
 ある、この様に捉えることも出来るかと思います。

 実際にオンビジネス、フォーマル場面において、洋装ノーネクタイ
 で人と会うことを想像すれば、いかに頼りなく、堂々と相対峙出来
 ないかが実感できるかと思いますが、いざきもので装うことを考え
 る時、紋付き羽織袴スタイルで整えるならば、例え外国要人が相手
 であっても堂々と対峙できるという“凛気”を覚えるのではないで
 しょうか。

 オフの寛ぎ(くつろぎ)の場面、着流しスタイルできものを楽しむ
 他に、折々の場面でフォーマルの紋付きや袴を身に着けることで、
 気概と共に纏うというきものの別側面の魅力も実感いただきたく、
 ご提案をいたします。


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 2 袴の仕立てにご注意を
 
 同じ“きものの仕立て”と言っても、長着、羽織の仕立てと違って
 袴の仕立ては高度で専門性が求められる分野となります。
 仕立てをなさる方、詳しい方ほどその違いに敏感で、ある種のこだ
 わり、線引きを持っていることと思います。
http:// www.nhk.or.jp/ otona/ s3/ 1999/ 990113.html

 実際に、製品紹介コーナー「想い入れ紹介」にてもご紹介しており
 ます仙台の呉服屋「布袋屋總本店」さんでは、長着/羽織、コート
 類、帯、袴をそれぞれ別の仕立所に依頼しているとのことです。

 現在、男のきもの、特に袴については需要が少なく、仕立て頻度が
 高くないために、また一括発注で管理の手間を省く意味もあってか、
 専門の仕立所に直接発注をせず、日常的に付き合いのある仕立所に
 発注したり仲介を依頼するケースが多い様に見受けます。

 もちろんケースバイケースで、それぞれの専門職人がいるレベルの
 高い総合仕立会社もありますし、プロとしてのシッカリとした仲介
 をする場合もありますので一概には言えませんが、仕上がりの面で
 トラブルがあるのは、往々にしてこの様なケースが多いものと思い
 ます。


 洋服、スーツ等のオーダーをイメージすると分かりやすいかと思い
 ますが、生地の選択はあくまで第一歩であって、その後のステップ、
 仕立て段階での採寸やディティール確認、着用イメージ/コーディ
 ネイト確認(顧客固有のスタイル=流儀の確認)こそが重要となり
 ます。

 しかしながら、呉服店の場合。ともすると反物が決まった段階で
 “一丁上がり”とばかりに、周りを取り囲んでいたスタッフが急に
 いなくなって、若い担当がたどたどしく仕立て手配を始めるという
 状況も見受けられます。
 お店によっては、仕立て専門の和裁士資格を持ったスタッフが担当
 する場合もありますが、顧客のスタイル、コーディネイトに提案の
 責任を感じるのならば、反物を勧めたスタッフも仕立てステップに
 同席すべきで、場を離れる理由にはなりません。

 この様な視点で見ていくと、仕立てステップを蔑ろにする呉服店で
 仕立てトラブルが多いのは当然とも言えます。

               ◇

 きものの仕立ての場合、「洋服と違ってシングル/ダブル、ボタン
 の数の違いがある訳ではなく、型が決まってあるから簡単。細かい
 採寸も必要ない」という説明で、単に身長、体重、ウェストの寸法
 のみで仕立てに出されるケースもありますが、実際に様々なきもの
 を着用する立場からはキチッとした採寸、寸法データの自己管理を
 お勧めいたします。

 男のきものは女性と違ってお端折がなく、縦方向の寸法調整が出来
 ませんから、寸法の違いが直ぐさま着丈に表れ、くるぶしが隠れる
 隠れないといった微妙な点は簡単に上下します。
 また同じく、通常は帯で隠れるはずの内揚げ線の位置も容易に上下
 しますので、帯の上部から大きく横の縫い線がのぞくという事例も
 よく見かけます。

 この他でも細かい部分における仕立てのこだわりは美意識とも連動
 し、よく着る人であれば各人各様で、決して一律のものではあり得
 ません。
 美意識以前に、同じ身長170cmの人でも、顔が大きい人小さい
 人では肩位置が違ってきますので、同じ寸法で仕立てて裾の位置が
 揃う道理がありません。

               ◇

 率直なところ、日本全国でも、スーツのオーダーサロンの様な形で
 顧客のスタイルを尊重し、そのスタイルを自己表現するサポートを
 トータルで行える男のきものの専門ショップは非常に数が少なく、
 全体レベルも低いとの現状を認識せざるを得ないと思います。

 これは必ずしも供給側(メーカー、流通等)のみの問題ではなく、
 購入し装うユーザー側との相互的な問題であると思います。
 優れたお店、メーカーは、優れた顧客との常なる対話の中からこそ
 生まれ育っていくものと思います。

 きものスタイルのポテンシャリティは、21世紀の現代においても
 なお世界的に高いものがあります。
 背広の語源になったとも言われるロンドンの紳士服街サビルロウで、
 まさに相互対話によるオーダーメイド=bespoke によりジェントル
 マン達が自国の服飾文化、精神を高めてきた様に、日本においても
 今の時代に生きるわれわれが、あらためてきものを通じて服飾文化、
 精神を高めていく様な供給側とユーザー側の関係性を構築し、大人
 の男のきものサロンを育て上げていきたいものだと考えています。


 米沢は袴の主要生産地で、地元織物組合の統計では全国生産の9割
 を占めるとも言われます。袴地(反物)だけでなく、袴の仕立て所
 の軒数も多く、様々な仕立て所があります。

 きもの村、私は、袴専門の仕立て所との連携により、野袴における
 デザイン(裁断図、ディティール、各所寸法の指定)を含めたトー
 タル・プロデュースをしております。
 仕立て上がりの現物をご確認いただき、納得の上でご発注いただく
 形での対応もいたしますので、じっくり確かなステップでお作りに
 なりたい場合には、ぜひスケジュールを確認の上米沢にお立ち寄り
 いただきたくご案内いたします。

 また、袴の仕立てトラブルでお悩みのユーザー、流通、メーカーの
 方で、情報交換をご希望の場合にはメールにて様子をご案内下さい。
 私は法律の専門家ではありませんので、そういった面でのアドバイ
 スは出来ませんが、いくつかの事例が集まると共通の注意ポイント
 やリスティングが可能になるかも知れません。
 当初、一定の情報蓄積が進むまでは効果的なサポートは難しいかと
 思いますが、ご一緒によい方向を探っていきたいと考えております。

               ◇

 「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
  ・想い入れ紹介
    http:// www.kimono.gr.jp/ mens/ lineup/

  ・布袋屋總本店
    http:// www1.sphere.ne.jp/ hoteiya/
 

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 3 その他
 
 前号のメールマガジンをご覧いただいた読者の方から、当ページの
 談話室「大人の男のきもの談義」に共感メッセージをご投稿いただ
 きました。
 ハンドル名「サンセット」さんの「袴姿に思うこと」とのメッセー
 ジで、非常に興味深い“俳人日野草城の袴のエピソード”をご紹介
 いただきました。
 現代に忘れかけている気概と装いの関連について、あらためて思い
 起こさせてくれるお話です。ぜひご覧いただきたく。
http:// www.kimono.gr.jp/ mens/ salon/ 43_index_msg.html

 このコーナーは、メールマガジンのバックナンバーをご紹介すると
 共に、自分のスタイル(流儀)を持つ大人の男のきものをテーマに、
 その魅力、装いの楽しみ、きもの心等について語り合う落ち着いた
 雰囲気のサロン(談話室)としてご提案をしている場です。

 みなさんにも読後の感想や新たな視点の提示など、ご意見をお寄せ
 いただければ幸いに存じます。

               ◇

 本メールマガジンのタイトルですが、このところの本文内容を表現
 するには十分でなく、当初段階とのズレを感じているところです。

 個々の製品価格情報も、全体としての価格信頼性を向上させていく
 意味から重要と思っていますが、現在きもの業界は大きな転換期に
 あり、メーカーの価格政策自体が大きく揺らぐ状況にあって、なか
 なか安心価格のご紹介を増やしていけない状況にあります。
 安値ラインの目安になればとご紹介する価格が、かえって高いもの
 になってはいけないとの考えからです。

 当面は、タイトルの“着こなし紹介”=きもの心、和のスタイル、
 価値観の面を中心にご案内していく予定でいます。

 ホームページでの製品・価格紹介についても、今後一部製品の価格
 修正や紹介の暫時見合わせ等を行う場合もあるかも知れません。
 状況が落ち着き、価格政策が確立されてきたらあらためてご紹介を
 再スタートしていきたいと考えております。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

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  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
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  :1999年10月 1日   更 :2002年10月 1日


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