◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
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【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介
2000.05.22 No.0011 配信数:0321
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◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆
≪≪目次≫≫
1 夏織物の魅力
2 メーカーのみなさんへ
3 その他
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1 夏織物の魅力
こちら米沢は、例年より少し遅くれた桜も終わり新緑のさわやかな
季節となりました。
まだ冷えてストーブを使うときもありますので袷のきもの(長着)
が多いのですが、晴れた日中は単衣のかろやかな着味が心地よく、
夏織物が待ち遠しく感じられます。
*
男性の場合、洋装スーツときものとの違いは、基本的なデザインの
違いの他に、素材(織り設計)の面での違いも大きいと思います。
緯度だけで気候ははかれませんが、東京の緯度はギリシャのアテネ、
イランのテヘラン、スペイン/モロッコ間のジブラルタル海峡辺り
となります。
洋装夏素材のモヘヤ、サマーウールといえども日本の夏には暑く、
英国ジェントルマン流儀に習い長袖シャツでスーツを着こなすには
必然クーラーのお世話になるところ大きく、エコロジカルな循環の
面からも負担が大きい様に感じます。
その点きものの場合は、日本の蒸し暑い夏を前提として素材づくり
(織り設計)がなされ、心地よい様にと工夫伝承されてきた蓄積が
ありますので、洋装では通常男性素材として用いられることのない
シースルー(透け)素材をはじめ実に多様な夏素材が見られます。
素材原料に絹(シルク)を多く用いる点、また夏用素材の多様さと
いう面で、洋装スーツときものでは素材使いに大きな違いがあり、
その意味で夏織物はきものならではの醍醐味を味わえるという点で
究極の素材といえるかも知れません。
実際、盛夏に黒の透け羽織の下から薄色の長着がモアレ模様と共に
浮き出る様にはゾクっとする様な男の色気を感じます。
同じく、暑い夏の日に涼感爽やかに透ける夏袴スタイルには、凛と
背筋の通った男性ならではの志を感じます。
男の凛とした気概と共に、色気やしゃれ心、美意識が詰まった日本
ならではのダンディズム。
洋装には見られない夏素材のきもの姿は、この日本のダンディズム
がひときわ浮き立つ装いとなる思いがします。
今年夏、是非薄く透ける繊細な夏織物で、日本の暑さを着楽しんで
いただきたくご案内いたします。
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2 メーカーのみなさんへ
きものへの想いを同じくし、安心してつくって、安心して商って、
安心して選び購入して、楽しんで着るという、メーカー/小売店/
愛好家(ユーザー)の3者連携により、きものを豊かに楽しむ環境
をレベルアップさせて行く“螺旋循環ネットワーク”の構築運営を
目指す「きもの村」。
今は地元米沢の織元仲間と連携して提案を進めているところですが、
今後米沢に限らず広く男のきもの、織のきものという事で、各産地、
各メーカーとの連携を広げて集積を高め、愛好家のみなさんに向け
それぞれに特色のある多様なきものの魅力を、幅の広いトータルな
ラインナップで提案していきたいと考えているところです。
◇
メーカーの使命役割、責任ということを考えるとき、
1 製品の質に対する責任 に加えて、
2 製品(情報・価格)をきちっとユーザーに届けるという責任
にも思いを巡らして対応することが求められると思います。
上記2、具体的には、
・製品特徴の説明、着こなし等楽しみ方の提案をする責任
・実際に見てさわって納得して選んで、納得して購入出来る様な、
安心して楽しく買える環境を整える責任
などがあげられるかと思います。
*
この点従来は、流通(問屋、小売店)の役割がしっかりと機能して
いて、メーカーとしては、流通に対して製品、情報を提供すること
で、それがユーザー側にも的確に提案され、結果として役割、責任
が果たされていたという状況がある様に思います。
しかしながら現状、とりわけ男のきものにおいては流通の役割が、
品揃え、製品説明、着こなし提案、価格信頼性等の面で機能不全を
起こしている状況と思います。
ユーザーのきもの購入における大きな不満も、お店で実際に品物を
見ることが出来ないという品揃えの少ない点、基本的な製品説明が
十分に受けられない点、コーディネイトのバリエーション等様々な
着こなしの楽しみ提案が受けられない点等に集約されると思います。
これは流通にだけ責を求める筋のものではなく、本来はメーカー+
流通が互いにプロとプロとしての連携均衡のもと、時に応じ役割の
分担比率を変えつつも供給側トータルとしてユーザーへ提案の質を
高めていくべきものと考えます。
*
ときにつくり手が、流通の多段階構造や価格の上乗せ率の高さ等を
あげ、消費者価格の高騰、ひいてはユーザー購入環境の不備を流通
側の責とする認識を示すことがあります。
しかしここで、つくり手として誰に対して供給の責任を負うのかと
いう問題を考えたいたと思います。
もし、目前の取引先である流通(問屋等)に製品を供給した時点で
責任が全うされたとするのであれば、製造流通の中における単なる
“染織工場”という位置づけとなります。
もし、製品の質/供給の両面でユーザー(愛好家、一般購入者)に
責任を持ち、流通の体制も含めて的確な購入環境の整備提供を図る
ところにまで経営の範疇を広げて捉えるつくり手を“メーカー”と
するのであれば、上記の“染織工場”と“メーカー”とでは大きな
違いが出てくることとなります。
先のユーザー購入環境の不備を流通側の責とする認識は、染織工場
としての発想であり、メーカーとしてユーザーに対しての供給責任
を意識した発想でないことが見えて来ることと思います。
*
実際、例えば家電メーカーと量販店、酒造メーカーと量販店の関係
の例を見ても、メーカーが安売りを牽制してのトラブルはあっても、
メーカーが高値販売に頭を悩ませる例はあまり耳にしません。
これは単純な話で、メーカーとして想定小売価格を発表することで
容易にそれ以上の価格での販売を牽制する事が出来るからです。
もし、先の流通側に現状環境不備の責を問うつくり手が、本質的に
ユーザーへの供給責任を意識し、本気で適正販売を望んでいるので
あれば、オープンな価格発表がなされているものと思います。
現在は、高額のマスメディア訴求を行わなくても、ずいぶん安価に
インターネットホームページという形で自社独自メディアを持ち、
容易に情報発信が出来る環境が整ってきていますので、自社製品の
紹介と価格発表を行うことが可能です。
また、もっと単純で効果ある方法としては、製品ラベルに製品名や
品質表示とともに価格を記すという方法も考えられると思います。
つくり手と流通の均衡(健全な取引関係)という意味では、目先の
相手を見るばかりではなく、本質的(最終的)なユーザーとしての
一般愛好家への供給責任を意識し、いかにユーザーが安心して選び
購入し、楽しんで着るかという購入着用環境を整えることを目的に、
そのための方法論として流通体制を考えるという意識変革を進める
なかで新たなより良い関係のあり方が見えてくる様に考えます。
きものの魅力に惹かれた一愛好家の立場から、なんとかユーザー/
小売店/メーカーが連携しつつそれぞれの立場で活き活きときもの
を楽しむ環境を作りたいと、30歳を過ぎてこの世界に飛び込んだ
自由人として、今後、ユーザーへの供給責任を意識したメーカーの
アクションを、期待したいという気持ちです。
◇
上記が本質的なメーカーのあり方、理想論と考えるところですが、
実際にこれを具現化していく課程(移行期間)においては、多くの
難しい局面が出て来ようかと思います。
長年に渡る既成構造から、あらたな体制を創り出して変化を遂げて
行くには一時的な反作用も大きく、メーカー1社のアクションでは
心細い面もあるやも知れません。
変革の必要性を感じつつも背負う社員や家族のことを考え、成功の
確証が見いだせない一歩を踏み出すことに躊躇を感じている経営者
もいることと思います。
しかし同時に、従来体制の継続の中からあらたな可能性を見い出す
ことも出来ず、そこには危機的な未来状況のみが確証を持って見る
ことが出来るというジレンマを感じていることと思います。
そこで、あらたな方向性へのチャレンジということで想いを同じく
するメーカー仲間が集い連携する中で、1社だけでは難しい変革を
相互連携の相乗作用により力強い形で進めていきたいというのが、
「きもの村」の目指すネット仲介センターであり、その連携ネット
ワークのオルガナイザーという役割方向です。
*
メーカー仲間が集うことにより、製品のバリエーションと奥深さの
面で集積力が高まり、それはユーザーへの訴求力となります。
ユーザーは、どの様な商品があり、どんな価格で、どんな着こなし、
コーディネイト、楽しみ方が出来るのか、トータルなラインナップ
として体系的に見たい、その中から楽しみながら納得して選びたい
という要望が強く、裏返して現状における不満となっていると思い
ますので、この点の解決方向を示すという意味からメーカー連携の
製品集積力は大きな意味合いを持つものと考えます。
また、この様なメーカー連携によるユーザーに対する強い訴求力は、
同様に流通から見ても魅力のあるポイントとなりますので、同じく
流通の立場からあらたな方向を目指して想いを同じくする仲間と、
プロのメーカーとプロの流通という立場で互いに緊張感を持ちつつ、
同時に信頼し合える安定的な健全関係を築いていく際のエッセンス
になるものと思います。
ここでひとたびメーカー同士の連携が進むと、それは更にメーカー
と流通の健全関係へと発展し、ひいては恒常的にメーカー/流通/
ユーザー3者が相互連携を図りつつ、もの作りの質、商品提案の質、
着る楽しみの質を高めていく螺旋循環をもたらすものと考えます。
*
インターネットによるコミュニケーション環境の飛躍的充実、個人
レベルでも容易に情報発信や情報収集、恒常的な双方向交流が可能
となった現状は、企業規模の大きくないきものメーカーにも大きな
チャンスをもたらしているものと思います。
ネット流通の世界においては、「B to B」「B to C」といった言葉
が聞かれ、Business to Business ということで「企業と企業」、
Business to Consumer ということで「企業とユーザー」という
流通戦略が注目されています。
きものの世界に置き換えると、「メーカー企業と流通企業(問屋/
小売店)との取り引き」「メーカー企業/流通企業とユーザーとの
取り引き」という捉え方になります。
しかし、今後はネット流通ならではの本質的な方向として、これら
の統合形である「B to B to C 」=「メーカー/流通(問屋・小売
店)/ユーザー」の三位一体となった連鎖(チェーン)体制が模索
されるものと考えます。
例えば、
・メーカーはもの作りの背景や、こんな形で着て欲しい、こんな
場面でこんなコーディネイトに合わせるものとしてはこういう
ものがある、今後はこういったものを創ってみたいと伝え
・ユーザーは、これにはどんな特徴があるのか、これとこれでは
どんな着こなしの違いがあるのか、こういう場面でこんな風に
コーディネイトして着るこういうものが欲しいと質問、要望し
・流通は、種々のメーカー提案を独自のセンス、得意分野により
特色のある品揃えで店ならではの個性的な提案を行うと共に、
メーカー/ユーザー両者の間で個別ニーズに見合う的確な提案
をしたり、ニーズをフィードバックし以降のもの作り/品揃え
に活かし、場合によってはオリジナル品の共同提案なども
この様な形で、それぞれのプロが常時の交流を持ち、たまに3者で
顔を合わせたりという会合等も含めてコミュニケーションを深めて
いく中で…
例えば色目等の面でも、なかなか各社間に統一感が見られず、他社
メーカーのアイテム同士をコーディネイトするのに一苦労といった
現状から、今後は、各メーカーがそれぞれの感性で色づくりを行い
つつも、ある一定の共通理解を持つ事により他社製品同士の間でも
バランスが見られコーディネイトもしやすくなるといった方向で、
クリエイティブベースの共有、相互刺激のベルアップが有効に機能
して連携効果が現れたりと…
結果として、メーカーにとってもの作りの質/楽しみを高め、流通
にとって商いの質/楽しみを高め、ユーザーにとっては着る楽しみ
/質を高めていく様な相互関係を築いていければ、そこには必ずや
素晴らしい恒常的な好循環が生まれてくることと思います。
ネットはこの様な実際的な関係づくりの手段として、大きな役割を
果たすことと思いますし、恒常的なコミュニケーション/関係性の
仕組みとして“場・集まり”を捉える「コミュニティ」という概念
は、今後あらたなユーザーと供給側との関係性として重要となり、
様々な方向が模索されていくものと考えます。
「きもの村」では、きものにおける「B to B to C コミュニティ 」、
トータルな連携相互作用体制により、メーカー/流通/ユーザーが
それぞれにきものを楽しむ事を共通目標にその質を高めていく様な
螺旋循環ネットワークを築いていきたいものだと考えています。
◇
西洋には「ノブレスオブリージュ」、高貴なるものの役割・責任と
いう様な意味合いの言葉があります。
貴族社会において、その高い地位と影響力には自ずとそれに見合う
役割・責任が生ずるという認識と、その重い役割・責任を全うする
気概を持つ貴族自身のプライドとともに語られる言葉と思います。
日本においては、自らを高貴なるものと位置づけ表明するセンスに
少々の違和感を覚えるところと思いますが、同じく武士という地位
にあって歴史に対する影響力をもつものとして、その判断行動には
責任が有するという意味での自負と責任感は、「武士道」の精神に
共通性が見いだせるものと思います。
この点で、西洋の貴族主義を背景としたダンディズムと日本武士の
凛とした価値観とは同調し、それぞれに誇るべきエスプリを現代に
問いかけている様に思えます。
*
この様な和の価値観、凛とした男性の美意識を備えた伝統の衣装で
あるきものを、今の時代の解釈で咀嚼し昇華継承していくことは、
現代に生き、きものづくりに携わるメーカーとしての役割、責任と
いえるのではないでしょうか。
また、未来への新秩序づくり、歴史変革への影響力という点では、
各産地、各分野のリーダーを自負するメーカーこそが率先して次の
アクションを起こす役割と責任を有するものと考えます。
今こそトップメーカーとしての自負を持ったもの同士の連携による
強者連合により、21世紀の豊かなきもの着用環境をあらたに創り
出していくチャレンジをする時機と考えます。
各産地の想いを同じくするメーカーのみなさんとともに、あらたな
方向を見いだして行きたいと考えています。
まずはメールにより第一歩の交流、コラボレーション(共同創造)
を進めていきたいと考えています。
熱い想いのコンタクトをお待ちしております。
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3 その他
「凛」という言葉は大好きな言葉で、日本におけるダンディズムを
一言で表すとすれば私はこの言葉を思い浮かべます。
洋装の場合も同様ですが、装い、スタイル(流儀)においては表面
的なファッション要素の他に、根本部分に各人の美意識や価値観が
現れるものと思います。
例えばきものにおいて、町衆の自由で気取らない発想、機微を表現
する着流しの“粋”スタイルと対比させて武士の袴姿を見るならば、
それは“凛”スタイルとなる様に思います。
今号で長々とお話しさせていただきましたが、私の場合の根本的な
価値観は“凛”スタイルです。
基本的にこのスタイルは変わりませんので、“粋”スタイル派の方
には少々違和感のある捉え方、ご案内をする場面もあろうかと思い
ます。
こういった場合は、偏りを修正して“粋”派のスタイルで読み直し
ていただければ幸いです。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。
きもの村 村長 長根 英樹
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