◆ ◇ ◆ 【男のきもの】 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
――――――――――――――――――― スロークロージング ―
きものダンディズム
――――――――― 2003.08.17 No.0027 配信数:0306 ―
◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆
≪≪目次≫≫
1 究極のエコスタイル(新夏涼装) 〜 和装の蓄積を見つめ直し
2 その他
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1 究極のエコスタイル(新夏涼装) 〜 和装の蓄積を見つめ直し
ここ数年、「エコスタイル」という形で、地球環境(エネルギーの
有限性や各種汚染、温暖化等)に配慮し、自然と共生するライフス
タイルを模索、提案する動きが盛んになってきました。
特に、夏の取り組みとして、冷房の設定温度を上げたり、ノージャ
ケット&ノータイの軽装を推進、奨励する動きが、各自治体を中心
に展開されています。
エコロジーの観点から夏の新たなスタイルを模索、提案する動きと
しては、羽田元首相のトレードマークとしても印象の強い「省エネ
ルック」が思い浮かぶところです。
この時には、提案が早すぎた面もあるのか、動きが大きく広がって
いくことなく収束していった訳ですが、今回あらためて、全国的な
広がりを持つ本格的なムーブメントとして、日本の気候、風土、自
然環境にマッチする夏の装いの模索が始まった様に見受けます。
しかしながら、今の「エコスタイル」(夏の軽装)の動きの中では、
若干の懸念を感じる点もあります。
それは、“装いの社会性”(社会性の希薄化傾向)という点ですが、
今の混沌とした社会状況とも連動する面を感じているところです。
現在、各自治体を中心として、ノージャケット&ノータイという形
で夏の軽装運動が進められていますが、実態を見ると、夏のスーツ
スタイルから上着を脱ぎ、ネクタイを外し、Yシャツの衿ボタンを
外しただけの格好となっている例が多い様に見受けます。
これは、アフター5以降の“残業スタイル”として馴染みの格好で
あり、従来は外部との接触を意図しない内輪の作業スタイルとして
用いられていたものと思います。
率直な感想としては、軽装というにもあまりに工夫がなく身も蓋も
ないスタイルであり、文化的な香りの感じられない、表層的な個の
欲求がむき出しになった装いという印象を受けます。
いくら「エコスタイル(軽装)推進中」といったバッジやワッペン
をつけても、それでカバーできる筋の問題ではなく、大人のオンビ
ジネスの装いとして非常にだらしのないスタイルに見えます。
そもそも、衣服装いに求められる要素としては、温度調整の機能、
動きやすさといった面の他に、礼の心や場のわきまえを表現する社
会性という面も非常に大きな意味合いをもって考慮されるべきもの
と考えます。
“軽装”という言葉は、従来の装いとの比較から“衣服分量的にも
重すぎず、実際の気候に応じた軽やかな装い”といった意味合いで
用いられているものと思います。しかしながら現実の装いを見ると、
“軽装”という語感から、“TPOの捉え方を軽くして、心やわき
まえのレベル(社会性の認識)をゆるやかにする(してもよい)”
との錯誤(公私の区別の曖昧さ)が生じているかの様にも見受けら
れます。
本来目指すべきは、日本の気候に応じた夏の新たなソーシャル(オ
ンビジネス)スタイルの開発、提案、推進ということだと思います
ので、ミスリードを招かない様、“新夏装”“涼装”といった表現
で新スタイルの提案、普及を推進していくのがふさわしい様に思い
ます。
◇
各国、各地域の伝統的な衣食住、文化は、地域の自然環境に応じて
無理のない形で発展し蓄積されてきた経緯がありますので、自ずと
エコロジカルなスタイルに出来上がっているものと考えます。
今あらためて、日本の夏にあった装いを考えるに際しては、和の服
=きものの蓄積を温故知新で見つめ直す「スロークロージング」の
発想が重要になってくるものと思います。
「衿を正す」という言葉にもある様に、元来、きものは着装、姿勢、
そしてその背景にある己の凛とした心(やましさのない心、見栄を
張らない心、虚心)を整えることによって、襟元を隠すことも飾る
こともなしに礼の心、社会性を表現してきた、和の独自の美意識に
あふれた装いです。
洋の礼装、タキシードやモーニングスタイルと並んでも、紋付羽織
&袴のタイルであれば、ネクタイなしでなんら臆することなく振る
舞うことが出来るのも、きものの衿スタイルの完成度の高さを示す
証左と言えましょう。
きもの村では、ノーネクタイの新たな夏の装い(ソーシャルウェア、
オンビジネスウェア)として、涼しさと共に礼の心、社会性(凛と
した佇まい)を兼ね備えた、きもの衿スタイルの装いを提案いたし
ます。
特に、半袖で丈の短い(膝丈)きものとズボン風袴との組み合わせ
(セットアップ)スタイルは、着装も容易であり、軽快な着心地、
活動性の高さ、凛とした和のテイストといった3要素が高い次元で
融合したスタイルとしてお薦めいたします。
袖の形については、気温や用途によって、半袖の他に、舟底長袖、
きもの袖(角袖)などを使い分けるのがいいと思います。
今回の提案は、新たな発想によるスタイルですので文章だけではイ
メージしにくい面があるものと思います。
ホームページに着姿の画像を用意いたしましたので、以下のアドレ
スにてご確認いただければ幸いです。
http:// www.kimono.gr.jp/ mens/ lineup/ 2_index.html
上記アドレスにてご紹介の半袖きものは、絹素材のもので、特殊な
撚糸(よりいと:飾り撚糸)を用いてネップ(節)風の表情を織り
表した紅梅夏御召です。
生地に透け感があり、半袖&膝丈のデザインともあいまって非常に
涼しく快適です。
◇
夏の装い。
緯度だけで気候が分けられる訳ではありませんが、東京の緯度は、
およそイランのテヘラン、ギリシアのアテネに相当します。
広く“洋服”とは言いますが、スーツスタイルにおいては伝統的に
イギリス流の着こなしがオンビジネスのスタンダードとなっている
面があるものと思います。(デザインやブランドという面ではなく、
夏でも長袖が本式といったドレスコードの面において。)
イギリスロンドンの緯度が北海道(北方領土)よりも高い点を考え
ると、やはり日本の夏場におけるそうした(イギリス流の)スーツ
スタイルに無理が出てくるのも当然と言えるでしょう。
外から戻ってくる社員に合わせて、オフィスでは女性がカーディガ
ンを羽織りたくなる程に冷房をきかせる過冷房、それに伴うヒート
アイランド化(エアコン室外機からの廃熱)の悪循環。
そうしたゆがんだ作為的な環境下でしか装いを成り立たせることが
出来ないとするならば、その様なスタイルは文化的に誇れるもので
はなく、また長続きのするものでもないと思います。
今、あらためて、自らの国、地域に応じた衣服装いを、自らの衣文
化、衣の蓄積を温故知新で見つめ直す中から見出していく「スロー
クロージング」が大切になってくると考えます。
まずは現在の「エコスタイル」のムーブメントの中で、夏の装いに
きものスタイルを応用することをきっかけとして、寒暖調整の工夫
の他独自の装いの美意識など、日本独自の素晴らしい衣の世界、和
装の蓄積が存在することへの“気付き”が広がっていくことを期待
します。
その後、春夏秋冬、礼・社・仕・洒・寛・作・休のきものスタイル
を通じて、和の装い、和の服の魅力を知り、好きになり、更に装い
と精神文化の関わりの深さを実感する中で、和の精神性、和文化の
魅力を知り、好きになる。そして、そうした和の価値観を現代に発
展昇華させ新たな和のライフスタイルをつくり上げていこう、との
流れに発展していくならば素晴らしいと思います。
私としては、ナビゲート役の立場で、こうした展開をサポートして
いくことが出来れば幸いに思います。
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【参考】
■ メールマガジン - No.0017号
衿元の美意識 〜 覚悟の解放
http:// www.kimono.gr.jp/ mens/ salon/ 45_index_msg.html
■ メールマガジン - No.0019号
夏織物の魅力
http:// www.kimono.gr.jp/ mens/ salon/ 37_index_msg.html
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2 その他
今夏はこちら米沢でも不順な天候が続き、夏本番の暑さを味わうこ
とのないままに秋の訪れを迎えそうな気配を感じます。
とは言うものの、晴れた日には薄ものでも大分暑さを感じますので、
オンビジネスも含めて無理なく着られる毎日着として半袖きものの
工夫をするなど、「1年365日の男のきもの」の開発を進めてい
るところです。
きものならではの和の美意識を活かしつつ現代性を加味するリファ
インの中で、特殊な仕立て(デザイン、ディティール)により試作
に時間がかかる面もあるのですが、夏装に限らず、少しずつ開発を
進めて、新たなスタイルや工夫を紹介して参りたいと考えています。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。
きもの村 村長 長根 英樹
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