「男のきもの・織のきもの−大人の男のきもの談義

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No.57 長根英樹   2004.06.18 16:26 
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メールマガジン - No.0029 -2004.06.18 号
 1 衣服改革 〜 正しい着装と和装の見つめ直し&現代への昇華
 2 サミットにおける各国首脳のノーネクタイスタイル
 

  
 ◆ ◇ ◆ 【男のきもの】 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
 ――――――――――――――――――― スロークロージング ―

            きものダンディズム

 ――――――――― 2004.06.18 No.0029  配信数:0288 ―
 ◆ ◇ ◆ きもの村  http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 衣服改革 〜 正しい着装と和装の見つめ直し&現代への昇華
 2 サミットにおける各国首脳のノーネクタイスタイル
 3 その他

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 1 衣服改革 〜 正しい着装と和装の見つめ直し&現代への昇華

 衣服、装いは、表面的なファッションとしてのスタイルというだけ
 ではなく、道徳や価値観、美意識などの心のスタイル(在り方、様
 式)、人生哲学や行動様式などを含めたライフスタイルとも繋がり、
 相互に影響し合う面があるものと思います。
 過去においても、社会の乱れ、人心の荒廃、道徳の崩壊などに際し
 て、衣服、装いにおける改革を通じて心の建て直し、社会の建て直
 しが図られた例が見受けられます。

 現在の日本も、
  ・企業人の商売道徳の崩壊(雪印、みずほ銀行、三菱自動車等)
  ・官僚の責任感、公徳心の崩壊(薬害エイズ、年金の不正流用等)
  ・政治家の倫理観、リーダーとしての自覚の欠如
   (人生いろいろ発言、説明責任の放棄等)
 などなど、大人の無責任な言動が子供達にも大きな悪影響を与え、
 異常な事件(長崎の事件等)が多発するなど、モラルの崩壊、社会
 の崩壊が進んでいる状況と見受けます。

 一方、衣服、装いの面でも、ズボンを尻まで下げた着装や電車内で
 の化粧直し、茶髪などの他、大人の社会でも礼装の度を越した簡略
 化やテレビキャスター等の衿の乱れなど、ケジメ感のなさ、装いに
 おける社会性の意識の希薄さ、服装リテラシーの低下など、乱れ、
 崩壊が進んでいる様に見受けます。

 日本の構造改革、社会の改革、心の改革を進めていく意味において、
 今こそ衣服、装いの改革「衣服改革」が重要と実感するところです。

               ◇

 現代の衣服改革においては、制服(国民服)の制定や奢侈禁止令な
 どによる強制手法とは別に、各界各層の責任ある立場から率先して
 装いを正すことにより社会に一定の基準(スタンダード)を示し、
 新たな装いの価値観や美意識への共感や賛同の輪を広げていくとい
 う方法論によって、新時代の装いの在り方、スタイルを再構築して
 いくことが出来得るものと考えます。

 まず第一段階として、衣服そのものを変える以前に、現在の衣服を
 正しく着付けるという着装改革が重要になるものと思います。
 留めるべきボタンは留める、上げるものは上げる、締めるものは締
 める。こうした正しい着装は装いの初歩であり、きっちり感、心身
 の直な姿勢にも繋がるものと思います。

 また同様に、場や立場に相応しい衣服を正しく選ぶという服装規範
 面の改革、適正化が重要になるものと考えます。
 装いのしきたり、ドレスコード(服装規範)には、個人と社会との
 繋がりの大切さを踏まえた上で、如何に場や立場に相応しい心持ち
 を表現し伝えるかという繊細で機知に富んだ衣文化の蓄積が詰まっ
 ています。
 こうした装いのメッセージを的確に読み取り、また自らの装いによ
 り的確に発信することで、豊かな心の会話を楽しむという能力=服
 装リテラシーの重要性を再認識し、大人の基礎的な素養として位置
 付けていくことで、社会性の意識も高まっていくものと思います。

 上記の様に、現在の衣服を前提に、着装改革、服装規範面での改革
 を進めていくことにより、衣服そのものの改革の方向性も見えてく
 るものと思います。
 例えば、夏期の装いとして「エコスタイル」の運動が展開されてい
 ますが、ボタンをきっちりと留め正しい着装をしつつ襟元を涼しく
 装うという意味から、最初から衿を開けて着ることを前提としたデ
 ザイン面での工夫、改革方向が見えてくるものと思います。
 Yシャツの衿ボタンを2、3はずしたスタイルと、開襟シャツでは
 装いの完成度、きっちり感は全く違い、エコスタイル(仕事着)と
 しての相応しさも自ずと違ってきます。
 そして、ネクタイをつけない開襟シャツスタイルをオンビジネスで
 如何に堂々と装うかという意味では、和装におけるきもの衿デザイ
 ンに込められた矜持、美意識の見つめ直し、理解も重要になってく
 るものと思います。

 今後、日本の気候環境に見合った装いを再構築する意味で、また日
 本ならではの価値観や美意識、和の心を表現するに相応しい装いを
 再構築する意味で、衣服デザインの改革、服装規定面での改革、着
 装面での改革においては、和装の蓄積の見つめ直しとそれを踏まえ
 た現代への昇華=「スロークロージング」が重要になってくるもの
 と考えます。

               ◇

 【参考】
  ■ メールマガジン - No.0026号
    服装リテラシー 〜 装いによるメッセージ
http:// www.kimono.gr.jp/ mens/ salon/ 54_index_msg.html

  ■ メールマガジン - No.0017号
    衿元の美意識 〜 覚悟の解放
http:// www.kimono.gr.jp/ mens/ salon/ 45_index_msg.html

 
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 2 サミットにおける各国首脳のノーネクタイスタイル

 上記1とも関連し、衣服、装いの乱れと社会秩序の乱れという意味
 では、先日アメリカで開催されたシーアイランドサミットにおける
 各国首脳のノーネクタイスタイルが、現代におけるその象徴として
 印象に残りました。

 サミットの運営、コーディネイトは、開催国の様々な意図を反映し
 て企画されるものですが、今回の「ノーネクタイスタイル」による
 会合は、“合理主義”というよりはむしろ“本能むき出し”の、い
 かにも現在のアメリカらしい「義(理念やけじめ)よりも利、力」
 という政治的な方向性と、そうした問題を責任ある各国リーダーと
 しての立場から徹底して議論することを避けたいとする現状是認、
 なあなあ主義、長いものには巻かれろ… といった対話姿勢を象徴
 しているかの様に見受けられました。

 そんな中、ただ一人、フランスのシラク大統領だけは、ネクタイス
 タイルで会合に臨んだとのこと。
 大人の男の装いには、暑い/寒い/窮屈といった個人の本能的な感
 覚を越えて、社会性を意識しつつけじめを持ったある種自己抑制的
 な部分、わきまえを自覚した“凛”とした部分が必要になるものと
 考えます。
 そして、こうした装いにおけるけじめが、普遍的な義を求める理念
 的な面、社会性という面にも繋がってくるものと思います。

 日本にも「胸襟を開いて」という言葉がありますが、夜の非公式な
 差し(1対1)の会合ならいざしらず、世界の中で8カ国だけが参
 加して世界の行く末、国際秩序の在り方を議論する公式な会合の場
 で、実際に襟元のけじめを疎かにして装うことを意図した言葉では
 なかったものと思います。
 もしノーネクタイで装うのであれば、和装で臨んでもらいたかった
 ものです。

 今後、真に普遍的な国際協調体制を構築していく上で、日本の伝統
 的な価値観の見つめ直し、再評価の動きが重要になってくるものと
 思いますが、世界に向けて和装スタイルを通じて和の心のエッセン
 スを伝えていくことも大きな「衣服改革」のテーマになり得るもの
 と考えるところです。


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 3 その他

 こちら米沢も夏を迎え、季節の作物が少しずつ出回り始めました。
 まだ時季は早いのですが、とうもろこしと枝豆は夏の大きな楽しみ
 で、田舎暮らしの豊かさが実感されます。

 米沢はあっさりスープに極細縮れ麺のラーメンも特色があり名物に
 なっていますが、マヨネーズを乗せて食べる夏の冷やし中華もまた
 隠れた名物です。

 夏バテ時の鯉の甘煮もまたパワーの源になって元気が戻ります。

 雪国の短い夏、そして盆地の暑い夏ですが、梅雨が明けてからの本
 格的な夏を楽しみにしているところです。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。


                   きもの村 村長 長根 英樹

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  :1999年10月 1日   更 :2002年10月 1日


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