◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
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【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介
2000.01.31 No.0008 配信数:0305
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◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆
≪≪目次≫≫
1 冬の装い 〜 防寒の工夫(2)
・羽織
・羽織下(はおりした)
・袴
・ストール・マフラー等
・角袖コート
・インバネスコート(とんび)
・その他のコート(道行、マント等)
・雪下駄・雪草履/ブーツ等
・その他
2 その他
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1 冬の装い 〜 防寒の工夫(2)
前号に引き続き「冬の装い 〜 防寒の工夫」についてのご案内。
今号では、きもの(長着)の上から用いるアウターの装いについて
ご案内をいたします。
◇
「羽織」
羽織は、コートと違って室内で脱ぐ必要がなく、洋装のジャケット
感覚で着用できますので、ベーシックな防寒のアイテムとなります。
秋冬は、裏地(羽裏)をつけた袷仕立てが一般的で、表地の裾部分
の折り返し+羽裏の2重構造で温かいものですが、以前は更に防寒
に特化した綿入れ仕立ての羽織もあった様です。
現在でも、丈を長くした長羽織スタイルにしたり、羽織を2枚重ね
て着る羽織の襲(かさね)などの工夫により、手軽に防寒の装いが
できます。
少し肌寒い程度の初冬や、コートが大げさに感じられる場面では、
長羽織をコート感覚で用い、羽織の上から重ねる着方がお薦めです。
防寒専用の羽織を、ウールなど温かく手入れの容易なリーズナブル
素材で作っておくと、ストール、手袋等とあわせベーシックな防寒
スタイルになると共に、不意の雨雪等でも安心です。
◇
「羽織下(はおりした)」
羽織下は、長着の上、羽織の下に着るもので、袖無しの陣羽織の様
なデザインの防寒着。
イメージは出来るのですが、実際に現物を見たことはありません。
綿入れの羽織でなくても温かく着られる様に、袖無しで動きやすい
ものを中に一枚着重ねるという工夫と思います。
羽織を着用した際、表から目立たない様に、前幅は広くなく、衿も
あっさりと細衿です。
素材は滑りの良い羽裏や胴裏等を使ったもの、仕立ては綿を入れた
仕立てが多かった様です。
軽くて動きやすいことから、家庭での気軽な防寒着の役割もあった
ことと思います。
こういった日常の細かい工夫は、どんどん世代伝承が難しくなって
いますので、途絶えないうちに受け継いでいきたいものだと考えて
います。
ご案内の足りない点、その他の工夫等、羽織下に限らずお気付きの
点をお聞かせいただければ幸いに存じます。
◇
「袴」
袴を防寒のアイテムとしてイメージされる方は少ないかも知れませ
んが、日常的に袴をお召しの方はその温かさを実感されていること
と思います。
現在、袴の仕立ては夏冬を問わず裏地を付けない単衣仕立てがほと
んどですが、かつては裏付きの袷仕立て、あるいは綿入れ仕立ても
あったとの事。
袴は、夏に透ける素材のものも着用しますので、防寒だけの意味を
持つものではありませんが、着用して温かいことは確実です。
袴を付けない着流しスタイルは、ロング巻スカートを着用している
のと同様となりますので、男性にとっては新鮮な開放感が味わえる
反面、冬はスースーと風を感じることとなります。
「ズボンとスカート、どちらが温かい?」と問うまでもなく、袴は
長着の上に+αとして着用しますのでそれだけでも温かくなります。
スカート状の「行灯袴(あんどんはかま)」と、股の分かれた「馬
乗り袴(うまのりはかま)」では、馬乗り袴の方が風の侵入を防い
で温かくなります。
また、更に裾をスリムにしてズボン状のスタイルとした「野袴(の
ばかま)」等の袴は、一段と温かくなります。
その活動性と共に、温かさという意味でもお薦めのアイテムです。
画像等詳しくは、ホームページにてご確認下さい。
「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
・大人の男のきもの談義
No.2 オン・ビジネスの装いとしての袴スタイル
http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html
◇
「ストール、マフラー等」
襟元の防寒という意味で、手軽でありつつ、風の侵入を防いで随分
と温かさのます重宝なアイテムが、ストール、マフラーなどです。
コートを着用する際の、襟元の汚れ防止になるとともに、コーディ
ネイトのアクセントにもなりますのでお薦めのアイテムです。
コートを着用しないで羽織だけの時でも、一枚を襟元に巻くだけで
温かさは違ってきます。
軽くかさばらないで持ち運びも容易なので、旅行の際などでも重宝
することと思います。
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「角袖コート」
洋装のシングルコート(ステンカラーコート)の袖を角形にした様
なデザインの、一般的な男性用和装コートです。
襟の形は、へちま襟や背広襟(テイラードカラー)等いくつかバリ
エーションもありますが、見た目におとなしい、オーソドックスな
スタイルですので、場所を選ばず、安心してお召しいただけます。
素材は、一般的なウールの他に、凝った絹素材のものもあります。
真綿紬糸を用いた綾織のタイプ、網糸を用いたヒゲ素材のタイプ、
お好みの生地を見つけ誂えるのも楽しいことかと思います。
画像等詳しくは、以前織元勤務時代、地元新聞に連載していた特集
の再録ページがありますので、こちらにてご確認下さい。
「米沢織 織元 鈴源織物」ホームページ 男のきもの
・米沢日報連載「シリーズ 再発見 − 米沢織 きものの魅力」
No.9 冬、角袖コート雪道のスタイル
http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/ men/ 02e9802.html
http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/ men/ 02c005.html 参考
◇
「インバネスコート(とんび)」
イギリス、スコットランド北部地方のインバネス(Inverness)の
地名から名付けられたケープ付きコートで、シャーロックホームズ
の装いでも馴染みのあることと思います。
イギリスでは、袖のあるタイプ、無いタイプ両方のスタイルがあり
ますが、日本には幕末から明治にかけて輸入され、袖無しのタイプ
が「とんび」の愛称で広く用いられるようになりました。
大正、昭和の時代でも、文士や書生などのスタイルとしてお馴染み
のことと思います。
肩から袖にかけて全体を覆うケープには、袖から前部分のみを覆う
タイプの他に、背中も含めて一回りするタイプもあり、このタイプ
でケープ丈が長いものを「二重廻し(にじゅうまわし)」と呼んで
いた様です。
現在では、背中も含めて一回りするタイプのケープが付いたものは
ほとんどありませんので、デザイン上の区別は無しに、ケープ付き
の袖無しコートを総じて「インバネス」「とんび」「二重廻し」と
呼んでいる状況と思います。
かつてのイギリスの袖無しインバネスの袖繰りが、どの程度の大き
さだったのか存じませんが、日本においてきものの袖の出し入れが
容易な様に広められた可能性もあると思います。
いずれにしても、現在のデザインは袖繰りが大きく、非常に着脱の
容易なスタイルとなっています。
素材は、一部に絹地もありますが、ウール系(カシミア等)が主流
で、色は黒、チャコールグレイがほとんどと思います。
見た目のインパクトが強く、個性的なコートスタイルになりますが、
デザインの新鮮さ、ケープの流れるシルエットのエレガントさから
近年非常に人気が高く、きものに限らず洋装(スーツ等)において
も着用が広がっています。
画像等詳しくは、以前織元勤務時代、地元新聞に連載していた特集
の再録ページがありますので、こちらにてご確認下さい。
「米沢織 織元 鈴源織物」ホームページ 男のきもの
・米沢日報連載「シリーズ 再発見 − 米沢織 きものの魅力」
No.6 コートのお洒落、インバネススタイル
http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/ men/ 02e9711.html
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「その他のコート(道行、マント等)」
その他のコートとしては、女性の長コートの様な、四角に開いた襟
デザインの道行コートもありますが、現在ではほとんど見かけない
スタイルと思います。
男の道行コートスタイルというと、住職や易者の装いがイメージさ
れ抵抗があるかも知れませんが、お茶の方などで色のものを上品に
着こなしている方もいらっしゃる様です。
丈の長いコートは、防寒の他に雨コートとしてもニーズがあります
ので、襟、打ち合わせのデザインをリファインさせ現代の長コート
として復活させたいものだと思います。
その他、上記のインバネスとは別に、胴とケープが分かれていない、
長いケープのみの一枚布タイプで羽織るだけのマントもありますが、
既製品は見当たらず、誂えになることと思います。
こちらも非常にエレガントなものですので、絹地でフォーマル用に
作っておくと、非常に贅沢な装いが出来るものと思います。
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「雪下駄、雪草履/ブーツ等」
履物における防寒の工夫としては、爪部分に覆いのついた雪下駄、
雪草履が一般的と思います。
こちらは、底がスパイク状のデコボコになっていますので、うっす
ら積もった程度の雪ならば重宝することと思います。
もっとも、米沢の様に降り積もる雪では用を足しませんので、日常
的な装いの場合は、ズボンタイプの野袴にブーツや長靴を用いてい
ます。
フォーマルな場面では、車移動が主となり、会場で履き替えるのが
一般的になります。
ホテル等の会場では、下駄は制限されることがありますが、雪草履
は道中に限らず着用が可能な履物になります。
◇
「その他」
きもの(長着)の上から用いるアウターの装いということで、防寒
の工夫をご案内して参りましたが、長着自体の防寒の工夫としては、
仕立ての面で綿入れ仕立てがあります。
「四月一日」と書いて「わたぬき」さんという苗字の方もいらっしゃ
いますが、かつてはこの時季に綿を抜いて袷仕立てのものに替えた
とのこと。
同じ冬の装いでも、袷と、綿入れを使い分けていた様です。
現在では、家庭で容易に仕立てが出来る状況ではありませんので、
着用時季の限られる綿入れを仕立てる方は少ないかも知れませんが、
寒い地域で真冬専用ということでしたら、綿入れの長着も味のある
ものかも知れません。
長着とは別に、家庭着としての丹前(たんぜん)や半纏(はんてん)
は、綿入れ仕立てで温かい寛ぎ着になることと思います。
仕立ての他に、素材の工夫ということでは、「秋大島に春紬」等と
いう言葉がある様に、冬には温かい真綿紬系のきものが着たくなり
ます。
◇
前号、今号と、きものの冬の装い 〜 防寒の工夫というテーマにて
ご案内して参りました。
先人の工夫、創造の蓄積を、フォーマルなど形式的な部分だけでは
なく、日常的な部分のちょっとした工夫などについても受け継ぎ、
残していきたいものだと考えています。
また、読者の皆さんも、様々な工夫で冬のきものを楽しんでいらっ
しゃることと思います。
オリジナルの工夫やヒントについて、メールや掲示板などでお寄せ
いただければ幸いに存じます。
バックナンバー&交流掲示板は、ホームページにて。
「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
・大人の男のきもの談義
http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html
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2 その他
1月に入っても穏やかな日が続いていた米沢ですが、2月を目前に
じょじょに冬らしく、雪が降り積もって来ました。
今はブーツでも大丈夫ですが、もっと積もると長靴できものという
スタイルになります。
裾をスリムにしたズボンタイプの「野袴」は、防寒の意味合いと共
に、きもの姿で長靴を履けるという、米沢の冬のきものスタイルに
欠かせないキラーアイテムとなっています。
もっとも、米沢でも真冬にきもの姿で出歩く人は少なく、ごく1名
のキラーアイテムというのが、正確なところの様ですが。
みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。
きもの村 村長 長根 英樹
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