「男のきもの・織のきもの−大人の男のきもの談義

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No.38 長根英樹   2000.07.01 01:22 
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メールマガジン - No.0012 -2000.06.30 号
 1 きもののブランド選択
 

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
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       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.06.30 No.0012  配信数:0326  
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 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 きもののブランド選択
 2 その他

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 1 きもののブランド選択

 東の「鈴源」、西の「鳥居」。
 といわれる様に、男のきものの世界でもその品質、歴史、ポリシー
 等により、多くの信頼、評価を得ている“ブランド”があります。

 商品選択の際には、百貨店/専門店等でこうしたブランド品を見て、
 触って、一つの基準(スタンダード)として確認した上で他の品と
 比較して判断することをお勧めします。

 一定レベルの比較基準を持つことで、対象商品の特徴、位置づけが
 分かりやすくなったり、用途に応じて選び分けが出来たりと、比較
 のない単品判断による商品選びに比べ購入の納得度が高まるものと
 思います。

               ◇

 ソニーのビデオ、ホンダのスポーツカー、ビームスのスーツ、ユニ
 クロのカジュアル…など、通常の商品購入の際には、品質の安心感
 /信頼性、ポリシーへの共感等の意味から、自然とブランドを意識
 した購買選択がなされているものと思います。

 このブランド選択は、女性方のシャネルやグッチ等のいわゆる海外
 デザイナーズブランド品に限らず、日常用品の石けん、シャンプー
 から味噌、しょう油等に至るまで、あこがれやこだわり、あるいは
 お気に入りということで、ごく自然に商品選びの判断要素になって
 いることと思います。

               *

 ブランド認知のステップ。
 20年ほど前、アーノルドパーマーの刺繍ソックスをブランド品と
 して自慢げにはいたり、同じ3本線のスポーツウェアでもスペルが
 1文字違うものがあったり、バレンチノといえば○○バレンチノや
 バレンチノ△△など様々なバレンチノがあったり…などという初期
 の混沌時代があった様に思います。

 供給側の立場でブランドアイデンティティやブランド価値等を訴求
 する意味でも、あるいはユーザーの立場で様々なブランドの特徴を
 理解しお気に入りを見つけだす意味からも、ブランドを使いこなし
 うまく付き合っていくには時間と蓄積が必要になるものと思います。

 様々なブランドを実際に使う中で各ブランドの特徴、比較が見えて
 きたり、知人の参考意見とか、各メディア等でブランド紹介が出て
 きたりと、そういった一つ一つの積み重ねの上で、ブランドの絞り
 込み、使い分けが行われていくものと思います。


 きものの場合、着付け、折々のコーディネイト、メンテナンスから
 品選びまで、親から子へとの世代伝承がほとんど行われなくなり、
 今や海外のブランド品よりも縁遠いものになっている状況がある様
 に思います。
 
 かつて、時間をかけ、洋装品や車、お酒などのブランドを理解し、
 用途に応じて使い分けてきた様に、今後きものにおいてもあらため
 てブランドを意識した選択を行うことにより、試行錯誤等も踏まえ
 つつ、やがて一定の基準を持ち商品選びが行われる様になるという
 蓄積のステップが必要になるものと思います。

 メーカー、ショップをはじめ、メディアやユーザーもきもののブラ
 ンドを意識していく中で、現状の産地ブランドといった捉えから、
 同じ産地でもどこの織元かというメーカーブランド、またショップ
 ブランドなど、より深い形で商品の質を見極める流れが進むものと
 思います。

 これによりブランドの供給責任の明確化が求められ、従来今ひとつ
 不明朗だった価格や品質についても透明性が増していくものと思い
 ます。
 (きもの雑誌等でも、紹介商品の販売先:メーカー/ショップや
  価格が、当然の様に表記される様になってくることでしょう。)

               ◇

 きもののブランドという場合、結城、大島、西陣、米沢など、生産
 地域で括った産地ブランドや、店毎に誂え染め等で独自色を出した
 ショップブランドという捉え方が主流だった様に思います。

 一方、例えばワインの場合、フランスワイン、ドイツワイン…など
 大まかな生産地域による特徴の違いもありますが、更に各シャトー
 (メーカー)毎にも独自の創意工夫、クリエイティブの探求を行い
 切磋琢磨して特色を出していますので、産地だけで選ぶのではなく
 メーカーにも注目して商品選びをしていることと思います。

 これは、同じバーボンといっても、ブラントン、ハーパー、グラン
 ダッド、フォーロゼス…などと好みの違いがあり、やはりメーカー
 によって選択をしている状況にも通じるものと思います。


 同じ様にきものの場合も、同一産地といえども、各織元(メーカー)
 毎に様々な創意工夫、独自のポリシー等により、クリエイティブを
 競っています。

 男のきものの場合、織りのきものが大半で、織元毎に特色が表れる
 部分が大きいので、メーカーブランドという視点で捉えると分かり
 やすいものと思います。

               *

 従来からきものメーカーは長期縮小傾向にあり、現状で男のきもの
 をメインとしているメーカーはそう多くありません。

 その男ものメーカ−でも、帯メーカーや袴メーカー等と効率重視の
 立場から専門特化が進んでいる状況にあり、幅広いラインナップで
 男ものを作っている総合メーカーは本当に極わずかです。

 そんな中、米沢の鈴源織物、西陣の鳥居良は、幅広いラインナップ
 を揃えた日本を代表する男のきものメーカーといえると思います。

 米沢 鈴源織物有限会社  http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/
 西陣 鳥居良株式会社


 他にもそれぞれにこだわりを持ったブランドがありますが、今回は
 総合メーカーとして以上の2社をご案内いたします。

 是非一度幅広い製品ラインナップをトータルで体系的にご覧になり、
 男のきものの奥深い魅力を再発見していただきたいと思います。

               *

 きもののメーカーブランド。
 メーカー毎に色目の系統に特徴があったり、地風の面でも独自の技、
 こだわり等がありますので、コーディネイトを考えたり、着心地が
 気に入っている場合、ブランドを意識して覚えて、それを選ぶこと
 で、次回もしっくりと気持ち良く着られるということがあります。

 また、総合メーカーのラインナップを一つ一つ体系的に見ることで、
 メーカーポリシーが見えてきたり、あるいは非常に繊細なコーディ
 ネイトの奥義の様なものが見えてくる場合もあります。

 一口に紬、御召といっても様々な表情があり、それに応じた活躍の
 場も違って来ますし、また袷/単衣/盛夏という四季分類に加え、
 更に二十四節季を感じ取る繊細な感性を踏まえた微妙なニュアンス
 を表現する様な織物もあります。


 かつて日本のダンディ、着道楽人達は、こういったプロ(メーカー
 やショップ)との交流を大事に活かして要望を伝え、またプロ達も
 これに応える様なクリエイティブ、提案を行う相互循環の中で素晴
 らしい蓄積をなしてきたものと思います。

               ◇

 ブランド主体の重要性。
 現状では一般に「大島のきものを買った」「博多の帯を買った」と
 いう様な話しは聞きますが、どこのメーカー(ブランド)のものを
 買ったという話は、きものの場合あまり聞きません。

 しかし、メーカーは同一産地内でも切磋琢磨しそれぞれにクリエイ
 ティブを深めていますので、この現状は少々寂しいものと思います。

 皆さんのビジネスを振り返ってみても、同業他社/他人と比べて、
 どこも大して変わらないという様な選択をされるとしたらガッカリ
 としやる気も失せるのではないでしょうか。
 またそれは、安易な取り組みを助長することにも繋がります。

 せっかくメーカーが頭をひねり、あるいは手間を惜しまず創り上げ
 たとしても、「産地が同じなら大して変わらない」とか、「紬は紬、
 御召は御召、色味が合えば何でもいいんじゃない」などという選択
 が主流になると、「それ見たことか、ユーザーに選択眼はない」と
 ばかりに安易なつくりの商品が横行します。

 そして、吟味生産のメーカーが苦しくなりやがて淘汰されていき、
 残るは安易なつくりのメーカー、口八丁、値引き合戦のショップと
 なり、ユーザーにとっても不幸になる悪循環が固定化するおそれも
 あります。


 市場、業界秩序というものは、ユーザーの選択と離れたところで形
 づくられることはなく、現在のきもの業界の在り様も(かつての)
 ユーザーの選択の結果といえるものと思います。

 将来のきものの楽しみのために、これからどの様な選択をし、どう
 いった姿勢の供給側(メーカー、ショップ)を支持、応援して共に
 いい関係、在り方を創り上げていくか、ユーザーにも問われている
 部分だと思います。 

               *

 きもの村では、ユーザー、ショップ(流通)、メーカー3者の交流
 体制が重要だと思っています。

 ものを深く楽しむためには、供給側とユーザーが相互に刺激し合い、
 つくる楽しみ、商い提案する楽しみ、着る楽しみを広げ循環させて
 行く関係の中から、互いに楽しみ環境を創り上げ高めていくという
 共創(コラボレーション)の姿勢が求められると思います。

 日本人ときものとの関わりという意味で、かつての日常着が、現状
 では普段着の着方すら教室に通わないとなかなか思う様にならない
 という大きな文化の断絶を感じる世紀末ですが、インターネットの
 普及によりユーザー、ショップ、メーカーがそれぞれに想いを持つ
 個々人の立場で交流する環境が飛躍的に進んだ今、私は21世紀に
 あらたな関係を再構築出来得るのではないかと大きな期待をもって
 いるところです。


 例えば出版の世界では、既に絶版となった出版物をユーザーニーズ
 の集約により復刊させて行くという形で、ユーザーと供給側を繋ぐ
 役割を目指すサイトが登場してきています。

 復刊ドットコム  http:// www.fukkan.com/


 きものの場合も同様に、ユーザーと供給側を繋ぎ、かつての逸品を
 復活生産したり、あるいは時代に応じた製品をあらたにつくり出し
 たり、また今ある製品の特徴を的確に伝え/比較検討の出来る情報
 センター機能を果たしたりする“ネット仲介センター”が求められ
 大きな役割を果たすものと考えています。

 これには、それぞれの分野の生産、提案という意味合いから各産地
 メーカーの参加も重要となり、また幅広いユーザーニーズを集約し
 共同発注(ロットでの買い取り)を行う為にはショップ(流通)と
 ユーザーの広がりも重要となります。

 きもの村では、微力ながらこのネット仲介センターの構築に向けて、
 ユーザー、ショップ(流通)、メーカー3者の交流コミュニティの
 コーディネイト役を目指し活動、提案をしているところです。


 きものを愛し、想いを同じくする仲間と、それぞれの立場を越えて
 あらたな方向を模索していきたいと考えています。


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 2 その他
 
 季節の移ろいを装いを通して味わい堪能するという意味で、日本の
 四季とそれに応じた多彩な織物は、まさに天の恵みと先人達の技や
 繊細な感性、洒落心の蓄積のたまものと有り難く思うところです。

 先日の選挙、天気にも恵まれ絽の野袴をつけて出かけて来ましたが、
 季節のメリハリと共に凛としたこころの高ぶりと落ち着きを味わい
 リフレッシュすることが出来ました。

 これから暑い日が続きますが、夏織物で20世紀最後の夏を存分に
 楽しんでいただきたくご案内いたします。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

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  :1999年10月 1日   更 :2002年10月 1日


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