「男のきもの・織のきもの−大人の男のきもの談義

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No.41 長根英樹   2000.11.24 12:46 
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メールマガジン - No.0015 -2000.11.24 号
 1 長羽織の魅力
 2 「美しいキモノ- 冬号」〜 スタイル紹介
 

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
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       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.11.24 No.0015  配信数:0345  
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 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 長羽織の魅力
 2 「美しいキモノ- 冬号」〜 スタイル紹介
 3 その他

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 1 長羽織の魅力

 こちら米沢は初雪も迎えいよいよ秋から冬へ、季節のバトンタッチ
 の時季となりました。

 秋冬の装いは、表地&裏地の組み合わせの他にも小物なども含めて
 アイテムが増え、構成要素が多彩になりコーディネイトの楽しみが
 深まります。

 長着&羽織の基本アイテムの他に、インナーにシャツやニット等を
 合わせたり、袴、コート、マフラー/ストール、肌着、履きもの、
 手袋、帽子などの組み合わせにも工夫しつつ、色/素材感/バック
 ボーンイメージ等のバランスやストーリーの面で、トータルのコー
 ディネイトを自分らしく自由な発想で、暖かく楽しみたいものです。

               ◇

 洋装のジャケットと同様に、羽織には、長着の上から羽織ることで
 装いを整えるという意味合いがありますが、秋冬の羽織はこの他に
 防寒の役割も大きくなります。

 羽織の丈は、時代による大きなトレンド、フォーマル/カジュアル
 の違い、各人の好み等により一様ではなく、長短それぞれのスタイ
 ルがありますが、かつて大正から昭和初期のスタイルは現代よりも
 随分と長く、ゆうに膝下まである長羽織スタイルが一般的だった様
 に見受けられます。

 今一度、かつて見られた長羽織の魅力を見直し、秋冬の袷羽織とし
 て、防寒の意味合いとともにそのエレガントなシルエットを楽しみ
 たいものだと思います。

               ◇

 ここで、長羽織の丈、全体のシルエットについてですが、ゾロッと
 間延びした印象にならない様にするためには、丈の長さだけでなく、
 前丈と後ろ丈のバランスがポイントになると思います。

 “前下がり、後ろ上がり”の美意識は、角帯の締め方や袴の着付け
 (裾ライン)だけでなく、洋装ジャケットの丈バランスにおいても
 同様で、シルエットをキリリと整えるポイントとなります。

 長羽織の仕立ての際には、「前下がり」(後ろ丈よりも前丈をどれ
 ぐらい長くするかという差分)の寸法に留意して、通常よりも少し
 大きめに取ることをお勧めいたします。

 これにより、長羽織特有のエレガントさとともにシャープさを兼ね
 備えたスタイルが得られるものと思います。


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 2 「美しいキモノ- 冬号」〜 スタイル紹介

 今週発売の雑誌「美しいキモノ- 冬号」(アシェット婦人画報社刊)
 では、「男のKIMONOフリースタイル」のテーマで、自由な発想に
 よる男のきものの特集が組まれています。

 男性のきものスタイルは、とかく単調で面白みの少ないものの様に
 捉えられる傾向を感ずるところですが、一口にきものと言っても、
 それこそ士農工商、ハレもケも、雨の日も雪の日も、各人の生活に
 根ざして着用されていた装いですから、本来は実に多様で、様々な
 デザインや素材/色使い、コーディネイトの妙など、多彩で洒落心
 のエッセンスの詰まった幅広く奥深いものであったと思います。

 ここに来て市場でも、“男のきもの=紬のアンサンブル”といった
 枠組みを越えて、本来あった男のきものの多彩さを現代的な解釈で
 再構築した意欲的な供給提案が一部に見られる様になってきました。

 今回の特集は、和装視点のこうした新たな供給提案の紹介に加え、
 大胆に洋装アイテムも組み合わせて紹介することで、自由な発想の
 コーディネイト、新世紀のきものスタイルを提案するものになって
 います。

 実際にこの様なスタイルを実践している事例紹介のコーナーでは、
 私も取材に協力して、長羽織&野袴スタイルをご紹介しています。
 (P106)

 ご参考に、今回誌面でご紹介したコーディネイトについて、以下に
 ご案内をいたします。

               ◇

 ・長着
   薄青鼠節糸織、「山絲織(やまいとおり)」:米沢 鈴源織物

   野蚕繭(やさんまゆ:野生の蚕からとった繭)から座繰り引き
   (繭を湯で煮て、柔らかくなってきたところを手で糸引きする
    手法)にてとった糸を用いた紬(節糸織:ふしいとおり)。

   野蚕糸は糸質が太く不均一で、節糸織はところどころに野趣に
   富んだ節(ネップ)が見られるが、他の部分は長繊維の糸であ
   り、繭をフェルト状(真綿)にしてから糸を引きだして織った
   真綿紬(結城紬など)の毛羽感のある素朴な温かみとは違い、
   独特の底光りするような光沢とスッキリとした表情が魅力。
   
   織り密度も高く非常に丈夫な織物で、贅沢だが寛ぎのきもの、
   お洒落着として満足度の高い品と言えるかと思います。


 ・羽織
   藍紺変わり御召、「騎射(うまゆみ)」:米沢 鈴源織物

   濃淡の糸を使い、立体的に縦シボを表現した変わり御召。
   色の濃淡とシボの凹凸による光の含み加減で微妙に移ろう玉虫
   調の表情が魅力。

   膝下たっぷりの長羽織スタイル。
   スラリと節のない絹糸を使った御召ならではの光沢感と流れる
   様なシルエットにより、ノスタルジックなエレガンスを感じさ
   せる装いに。


 ・インナー
   今回は襦袢ではなく、スタンドカラーシャツ&アスコットの洋
   装アイテムを合わせての和洋折衷スタイル。
   
   アスコット風にあしらったのは、青山の骨董通りで求めた古裂
   で、おそらく女性の帯揚げに用いられたものと思います。
   帯揚げは薄手の絹地が多く、現代のものでも色味の渋いものを
   選びインナーストール感覚で合わせても面白いかと思います。

   襦袢には重ね着の防寒の意味合いもありますが、長着が直接に
   肌に接しない様にする防汚の大きな役割がありますので、イン
   ナーにシャツやニットなどを合わせる際にもこの点に留意した
   いものです。

   具体的に、袖口の汚れは襦袢よりも防げると思いますが、襟元
   が課題となり、スタンドカラーシャツの場合、後ろ襟の高さは
   5cm位は欲しいところです。
   既製品ではこれだけ襟の高いシャツがあまり見あたりませんの
   で、私は誂えで着用しています。

   スタンドカラーシャツの他に、ハイネックやタートルネック等
   の薄手のニットも重宝するものと思います。
   木綿や麻など、家庭で洗濯や手入れが可能なきものの場合は、
   TシャツやVネックシャツなどを合わせてラフに着こなしても
   いいかも知れません。

   こういったインナーの自由な合わせは、女性よりも男性の方が
   冒険が可能で抵抗感が少なく楽しめる部分かも知れません。

   風通しのよい仕立て構造のきものは、秋冬にスースー風が入り
   寒い面もありますので、防寒の意味合いからも風の侵入を防ぐ
   インナーの工夫は重要な部分と思います。


 ・野袴
   青鼠紬袴、「鷹匠袴(たかじょうばかま)」:米沢 鈴源織物

   たて糸にスラリとした絹糸、よこ糸に紬糸と特殊な撚によって
   細かい“ヒゲ”を表現した“カール撚糸”を用いて織り上げた
   凝った袴地。

   絹糸による光沢感と紬ならではの節(ネップ)、カール撚糸の
   微妙なヒゲの3要素が絶妙なバランスで渾然一体となった表情
   が魅力の無地袴です。

   裾をスリムにしたズボン風のシルエットで活動性を高めつつ、
   本格的な前襞(ひだ)取りで袴特有の凛とした雰囲気に着姿を
   整えます。


 ・羽織(上)
   黒ウール長羽織。

   洋装幅広(スーツ)生地のウール素材を用いた長羽織で、真冬
   のコートコーディネイトを前に、ハーフコート感覚で羽織の襲
   (かさね)として着用しています。

   コートほど大げさになりませんが、ウール素材で暖かく、室内
   着用でも違和感がありませんので、小寒い時季に重宝する一枚
   です。


 ・帽子/ストール/手袋
   ミディアムグレイのソフト帽。
   グリーングレイ基調のシルクストール。
   ジャージニットの黒手袋。


 ・編み上げブーツ
   プレーンストレートチップの黒編み上げブーツ。

   他に、ジョッパーズブーツやサイドゴアブーツなどを合わせて
   も面白いものと思います。

   私は、本格的な米沢の雪道では長靴も合わせて冬のきものスタ
   イルを楽しんでいます。

               ◇

 【参考】
 米沢 鈴源織物有限会社  http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/
 

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 3 その他
 
 ここに来て、供給側、ユーザー共に、きものを一つのファッション
 アイテムとして捉えて、それぞれに自由な感性で楽しむ流れが見え
 始めた様に感じます。

 もともと決して固定的な装いではなく、時代々々に応じて多様性の
 あったものが、着用機会の減少から極度にパターン化され、生活着、
 ファッションからかけ離れ、特定の衣装の様になってしまった状況
 があるものと思います。
 しかし新世紀を前に、あらためて“着るもの”としてきものを見直
 し、素材やデザイン、仕立て、コーディネイト等の面で、現代的な
 視点からの解釈により個々人のスタイルに応じた楽しみ方向が模索
 され始めた状況を、心強く、わくわくした気持ちで受けとめている
 ところです。

 今後は、きものとの接し方、供給などの面で多様化が進み、ユニク
 ロのカジュアルやアオキのスーツの様な“アパレルきもの”という
 方向性も出てくるものと思います。
 この様に多様化が進むとき、一方であらためて従来の蓄積を踏まえ
 た伝統的なものの本質(スピリチュアルな)部分を探る動きも出て
 来るものと思います。

 スタイルは各人各様ですからそれぞれの方向性に応じつつ、供給側
 とユーザーが互いに交流連携して新たな価値を見いだしていく恒常
 的な流れを作っていきたいものだと思います。
 ユーザーも着て楽しい、メーカーもつくって楽しい、流通も商い
 (提案)して楽しいという形で、相互刺激の中からそれぞれがそれ
 ぞれの立場できものを楽しむ状況が理想形であり、基盤のしっかり
 とした成熟期へ繋がっていくものと考えます。

 みなさんとご一緒に、こうした善循環を模索していきたいものだと
 考えているところです。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

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  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

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  :1999年10月 1日   更 :2002年10月 1日


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