「男のきもの・織のきもの−大人の男のきもの談義

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No.6 長根英樹   1999.12.03 12:33 
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メールマガジン - No.0002 -1999.12.03 号
 1 健全流通提案への反応
 2 アイテム紹介−野袴(のばかま)
 

 
 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
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       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        1999.12.03 No.0002  配信数:0313  
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 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 健全流通提案への反応
 2 アイテム紹介−野袴(のばかま)
 3 その他

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 1 健全流通提案への反応

 第1号をご覧いただいた小売店のご主人から、
 「ユーザーのみなさんから信頼の得られる、良い小売り(商売)が
  できないものか」
 という主旨の、健全流通構築に対する共感メールをいただきました。

 やはり小売店の立場でも、
 「現状流通の不健全部分が、結果として価格上昇の形でユーザーに
  転嫁されている」
 との忸怩たる思い、晴れ晴れしない気持ちを抱き、それ故に、
 「ユーザーに堂々と接することが出来る正直な商いをしたい」
 との想いを強くお持ちの様子、ひしひしと感じたところです。

               ◇

 小売店個別の対応としては、目前の取り引き先、すなわち中間流通
 (問屋等)との取り引きにおいて、「きっちり買い取り、きっちり
 支払う」という、身を正した健全対応を既に行っている例もあろう
 かと思います。

 しかしながら、中間流通とメーカーとの取り引き段階で「きっちり
 買い取り、きっちり支払う」という健全取り引きが行われていない、
 一例としてメーカーに対して長期手形でなく現金支払いの健全決済
 をしている中間流通がない現状では、メーカーの出荷価格は決済面
 でのリスク、キャッシュフローの悪さを見越した「ヘッジ(リスク
 分上乗せ)価格」となりますので、この時点で健全性が損なわれ、
 それが価格に転嫁された状態となります。

 小売店段階でいくら自分が身綺麗にしても、付き合う先、すなわち
 中間流通がメーカーとの間で不健全取り引きをしていれば、全体の
 ルートとしては不健全ルートとなります。

               *

 困ったことに、小売店が「いざ、正直な商売、健全な仕入を」との
 ことで相手先を探しても、メーカーとの間で現金決済を初めとした
 健全取り引きをしている「健全な中間流通」が見当たらないという
 問題に突き当たります。

 小売店が個別にメーカーと健全な取り引きを行うという方向もあり
 ますが、多くの相手先と小口で取り引きを行うのは、小売店側でも
 メーカー側でもロスが多くなってしまいます。
 例えば、メーカーでは「対小売営業部(問屋部門)」等という本業
 (もの作り)以外の不得意分野の機能(小口の取り引き管理等)を
 持たなくてはならなくなります。

 小売店の独自性、個性化模索として、特に力を入れる製品に関して
 は、メーカーとの直接取り引き、さらに発展してのオリジナル製品
 の製作など、小売店とメーカーの直接的な関係性の強化方向はある
 と思いますが、純粋な製品仕入という面では、やはり「健全な中間
 流通」の存在が重要になってくると思います。


 こういった状況を踏まえての提案が、
  ・ユーザーに対して、各段階(ルート全体)での健全取り引きを
   前提としたヘッジ部分のない「安心価格」を、ネットを通じて
   オープンに提示し、
  ・提携の小売店を通じて、ニーズ(製品発注)を集約し、
 メーカーに対して共同購入(&現金決済)を行う仕組み、すなわち
 スマート中間流通の仲介機能です。

               ◇

 ここで、不健全流通によるしわ寄せの状況を整理。
 これは、単純な価格転嫁だけには留まりません。

 価格転嫁の形態としては、価格を上げるという方向と、製品の質を
 落とすという方向があります。
 すなわち、
  ・長期手形による支払い
  (200日を越えるものや実質1年近いものも)
  ・決済時に、請求額から一定の%を差し引く「歩引き(ぶびき)」、
   反数に応じて差し引く「反引き(たんびき)」、その他「協力
   費」等という名目での値引き慣行、常時における請求額と入金
   額のズレ
 などの構造的な不健全決済に加え、「何でも値切ってみる」という
 マインドの面での不健全な関係がベースとなり、
 メーカー側では、
  ・そう言う要望でしたら、値段に見合った製品を作りましょう
 という質の低下(価格に見合った素材選び、工程設計等)が起こり、
 クリエイティブのモチベーションが下がることとなります。

 当然、後継者や新規に飛び込む優秀な才能がしぼみ、クリエイティ
 ブの多様性が損なわれ、ますます需要が少なくなるという悪循環と
 なります。

               *

 また、決済面だけでなく、取り引きそのものにおける不健全な慣行
 として、在庫リスクの曖昧さがあります。
 すなわち、仕入れたのか仕入れないのか、今その製品は誰のリスク
 下(管理下)にあるものなのかがはっきりせずに、売れないときは
 返品という慣行です。

 価格の転嫁は、手形や値引きによる決済面だけでなく、こういった
 在庫(返品)リスクも含めて上乗せされます。


 また、仕入の曖昧さ、安易な借り入れ(返品)は、流通の生命線と
 言える製品セレクト、選択眼に大きな曇りをもたらします。

 製品の知識を持ち、見極める目を持ち、的確に提案する能力を上げ
 ることで在庫を増やさず、回転させていくのが流通ポジション本来
 の役割。
 ところが、安易に借りられ、売れない場合は返品、支払いは請求額
 から値引いた上で長期手形で…となると、製品知識、選択眼は低下、
 小売店やユーザーに対する本質部分の提案は出来ず、出来ることは
 新奇の販売方法の提案や、お為ごかしの「マニュアル蘊蓄、物語」
 「似合います、何でも合わせられます」の連呼。

 「角帯の締め方の知らない小売店主が居た」との話しも伺いますが、
 ここまで来ると「安易な仕入による提案力低下」というより、そも
 そも自身が好きできものを商っているのかという根本の問題となり
 ます。

 売り買いをする“もの”としか見ていず、売れるのであれば毛皮で
 も宝石でも、扱うものは何でもいい。
 自身できものを着ない、揃えがない、着る楽しさが感じられないと
 いう人の店から購入するとすれば、ユーザーはなんと不幸なことで
 しょう。

               *
 
 以上の様に、不健全な流通構造、取り引き慣行は、「価格への転嫁、
 不信感助長の面」だけでなく、「クリエイティブ環境の面」「製品
 提案の面」、全ての需給構造に機能不全をもたらします。

 今こそ、ユーザーのみなさんから協力(購買選択)を得、小売店、
 メーカーとの提携により、新たな健全流通を築いていく時と考え、
 微力ながらチャレンジをしているところです。

 あらためてご理解、ご協力を賜りたくお願い申し上げます。


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 2 アイテム紹介−野袴(のばかま)

 安心してつくって、安心して商って、安心して購入して、安心して
 着て楽しむことを目標に健全流通の構築を模索していますが、流通
 の健全性ときものを着る楽しさはまた別のもの。

 現在の不健全さを残した流通の状況でも、正直な姿勢のお店を探し
 たり、各自の工夫できもの着用を楽しんでいる方も多くいらっしゃ
 います。

 また、きれいな流通の流れが出来上がり、今まで15万円、20万
 円、時と場所によっては30万円近かったものが、安定的に12万
 円、10万円になったとしても、きものに魅力を感ぜず、着てみて
 楽しいという感覚がなければきもの着用には結びつきません。


 私は自身、縁あって30歳間近できものの魅力に目覚め、きものの
 バックボーンなしにこの世界に飛び込んだ着手志向の立場ですので、
 健全流通構築のチャレンジと並行して、と言うよりはきものの魅力、
 装う楽しさを伝え、分かち合うことを長期目標、本筋の活動として
 提案をして行きたいと考えているところです。

               ◇

 さて、今回は野袴(のばかま)。
 裾をスリムにしたズボン風の活動性の高いスタイルの袴です。


 男のきものの「着流し」スタイルは、気軽な寛(くつろ)ぎの装い、
 オフの場面で個としての開放感を感じられる装いです。

 もともと「着流し」という言葉は、袴着用と対比して使われる言葉。
 現在では「広辞苑」でも「袴や羽織を着けない男性の略装」とあり
 ますが、これは狭義の捉えで「紋付き羽織を着けていても袴着用で
 なければ着流し」という袴着用の有無で分けるのが本義と捉えます。

 洋装ではドレスコード(装い基準)として「ホワイトタイ(燕尾服
 着用)」「ブラックタイ(タキシード着用)」等ありますが、もし
 日本で「着流し不可」との会合があったとして、「長着だけでなく
 羽織を着ければOKだろう」とのことで袴無しで出席するとすれば、
 紋付きの羽織を着用していたとしても主催側、他の列席者と大きな
 ギャップが生じることと思います。

 もっとも現在では、きものを着用するだけであらたまった気持ちの
 表現と受け入れられ、「着流し不可」「袴着用」というのは、稽古
 事等特別な場面以外ではほとんど明示がない基準になると思います。

               *

 袴着用か着流しかのポイントは、股を塞ぐ「ソーシャル/オン・ビ
 ジネス」の場面か、股下リラックスした「オフ/寛ぎ/自由人」の
 場面かという区分けになるでしょう。


 袴と社会性の例をいくつかご紹介。

 書生の羽織を付けない袴スタイル。
 「晴れ」「ケ」の区分けとは別の観点からの装いです。

 東京湯島の講堂は、リベラルな気風が特徴で、武士の子息以外にも
 農民の出でも聴講を許されていたとのこと。
 しかしながらその様にリベラルな講堂であっても聴講の条件として
 「袴着用」が求められたとのこと。
 昔、学生は将来を背負って立つ存在という意味で、自らの意気込み
 と共に社会からの尊重があったと思います。

 また、宮中における女性の装い、十二単も「緋袴(ひはかま)」が
 穿かれたスタイルとなっています。

 「馬乗り袴(うまのりはかま)」と「行灯袴(あんどんはかま)」。
 股の割れた「馬乗り袴」が本来で、スカート状の「行灯袴」が簡易
 型といわれるのも同じ意味合いでしょう。


 以上の例からも、股を塞ぐ社会性を帯びた装いとしての「袴着用」
 の意味合いが確認出来ることと思います。

 ズボンの前開きを「社会の窓」とは、今あらためて考えると含蓄の
 深い言葉と思いますが、「窓」があると言うことは、「壁」がある
 と言うこと。
 プライベートな股部分を隠す「壁」、すなわち袴やズボンがあって
 初めて社会性を帯びた装いになるという意味で、きものにおける袴
 スタイルの意味合いを再認識する興味深い語彙と思います。

               *

 私は、男のきもの姿において「袴スタイル」には格別の想い入れ、
 こだわりがあります。

 これは、なるべく多くの場面でそれぞれの場面に見合ったきものを
 着用したい、また着用してもらいたいとの気持ちがあり、礼装時は
 もちろんですが、寛ぎ場面の着流しスタイルとは別に、男の外出着
 (ソーシャル/オン・ビジネス)としてのシーン、凛とした着姿を
 大事にしたいと思うからであり、この場合、「袴」は不可欠のもの
 となります。


 とは言っても、礼装以外の場面で「馬乗り袴」「行灯袴」等、裾の
 広がった通常の袴を着用するのは、混んだ電車や階段の移動など、
 活動性の面で難しい部分もあります。

 また、履物の問題。
 下駄や草履では、花緒による足先3点固定となり踵(かかと)部分
 のホールド感に欠けますし、雨雪が不安でやはり活動性の面で洋装
 と比べハンデとなります。
 実際に、「下駄や草履に抵抗があり、きもの着用をためらう」との
 話しも聞くところです。
 

 以上のことから、社会性を帯びた外出着の意味合いを残しつつ、裾
 の部分をスリムにして活動性を高め、靴に合わせても違和感のない
 ズボン風の「野袴」の研究、リファインを進めているところです。

 活動性を高めた袴は、「野袴」「道中袴」「庄屋袴」など、昔から
 様々なタイプがあります。
 お馴染みなのは、「水戸黄門」の装いです。
 金茶色と紫色の強烈な色合わせと、少し丈が短めのデザインから、
 洗練されたお洒落な装いとしてのイメージはないかも知れませんが、
 ズボン風袴の原型といえると思います。

 今回ご提案する「野袴」は、前チャックや両脇ポケット等洋装応用
 のディティールの他、各寸法、全体のシルエット等のリファインを
 加えた「きもの村オリジナル」の仕立てとなります。

               ◇

 まず最初に、入門用、日常着、雨雪等の装いとしてお薦めなのは、
 ポリエステル素材でところどころに節(ネップ)のある「ポリエス
 テル紬糸」を用いて織り上げたポリエステル紬地の袴。

 ホームページでは、「男のきもの・織のきもの/想い入れ紹介」
 No.3 無地ポリ紬袴 - 003 
 にてご紹介しています。
 野袴に仕立て上げての価格で \60,000 。
 取扱小売店は、宮城県仙台市の「布袋屋総本店」。
  http:// www1.sphere.ne.jp/ hoteiya/

 
 その他に、絹の無地紬袴、野袴に仕立て上げての価格 \108,000 。
 No.2 無地紬袴 - 002


 礼装、パーティ用の絹の縞柄平袴地もあります。
 馬乗り袴に仕立て上げての価格 \158,000 。
 野袴に仕立て上げての価格 \163,000 。
 No.1 縞平袴 - 001
 

 野袴デザインは、活動着としてだけでなく、時代環境にマッチした
 「21世紀デザイン」として、フォーマルの場面でも状況に応じて
 お召しいただきたいと考えています。

 例えば、来年は沖縄でサミットがありますが、首相には絽の紋付き
 お対に、同じく絽の縞平袴地の野袴スタイルで、全世界に和の装い、
 男の透け素材の上品な色気を紹介してもらいたいところです。

 
 以上、寛ぎの着流しスタイルに加え、ソーシャル/オン・ビジネス
 の装いとして、凛とした雰囲気を残しつつ活動的な「野袴スタイル」
 にてきものをお召しいただきたくご提案申し上げます。


 参考画像などを含めて詳しくは、
 「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
  ・想い入れ紹介
   No.1 縞平袴 - 001
   No.2 無地紬袴 - 002
   No.3 無地ポリ紬袴 - 003

  ・大人の男のきもの談義
   No.2 オン・ビジネスの装いとしての袴スタイル
  http:// www.kimono.gr.jp/ home/ mens.html
 等をご覧下さい。


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 3 その他

 次号では、クリスマス特別企画としてホームページにて開催予定の
 「日付連動オークション」についてご案内したいと考えています。

 今準備を進めているところですので、お楽しみに。

 
 なお、バックナンバーについては、ホームページの「男のきもの・
 織のきもの/大人の男のきもの談義」のコーナーにて、全文全号を
 ご紹介いたします。

 
 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

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  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp      
         http:// www.kimono.gr.jp/ 

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
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  :1999年10月 1日   更 :2002年10月 1日


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