「男のきもの・織のきもの−大人の男のきもの談義

キーワード検索:
|←最初←前ページ新規メッセージ登録タイトル一覧次ページ→最新→|

[43] サンセット 袴姿に思うこと 返事を書く
    2001.01.24 16:02

 はじめまして。着物については駆け出しのサンセットと申します。

 石州流という武家茶道を習っている関係で、着物と接点ができました。初釜のため、今年は念願の仕舞平の袴を購入いたしました。因みに長着と羽織は米沢の鈴源さんの御召です。
小生も男の着物、特に袴姿には凛としたものを感じ、好きです。

 こんな話をものの本で読んだことがあります。近代の俳人に日野草城という人がいますが、彼が小学生のころ、ある紳士に、教育勅語を暗誦できるかと聞かれて、「はい、よく読みますが、帰って袴をはいてきますから。」と答えて、一旦、家に帰って忘れてところを覚えこみ、袴をつけていってすらすら暗誦し、件の紳士を驚かしたというものです。草城の機転の利かせ方が主題ですが、この話からは天皇のお言葉である勅語を読むにあたっては、幼い少年でも、袴をつけ威儀を正すという「覚悟」があったことがうかがわれます。これこそ私どもが失って久しいものではないでしょうか。
 これに比べ、昨今の高校生を見ると、ズボンをだらしない腰ばきにはいてずりおろし、平気で裾を引きずり、裾の切れたのをよしとする風潮です。一昔前のバンカラとも明らかに違い、いわゆるだらしない格好がトレンドなのです。外見のみで判断することはいいことではありませんが、少なくとも何か、大事をなそうという「覚悟」を感じることはできません。我々の先人が袴をつけることで自身に求めてきた凛とした気概を失って、今の日本は久しいものがあります。着物の復権とは日本人の気概の復権でもあると思います。
 長根さんの試みが大きく実を結ぶ日がくることを願ってやみません。

 
[42] 長根英樹 メールマガジン - No.0016 -2001.01.20 号
 1 新たな世紀、時代に向けて 〜 きもの心
返事を書く
    2001.01.20 14:55

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2001.01.20 No.0016  配信数:0345  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 新たな世紀、時代に向けて 〜 きもの心
 2 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 新たな世紀、時代に向けて 〜 きもの心

 昨年1年間のご愛読、ありがとうございます。
 本年もよろしくお願い申し上げます。

 年も明け、いよいよ21世紀。新たな世紀、千年紀の始まりです。
 本来ならば、前の時代に錆び付いて動きが悪くなった部分があれば、
 これをきれいに直してから気持ち良く新たな時代を迎えるのが理想
 でしょうが、現状では積み残してきた課題も多い様に思います。

 もやもやとした閉塞感、明日の方向性の見えないもどかしさ、焦り。
 これはきものの世界だけではなく、日本社会の中に広く漂っている
 時代の気分、状況と思います。

 しばらくは混沌や試行錯誤が続くものと思いますが、しかしながら
 ここで、未来への希望をトランプのジョーカーの様な“エクストラ”
 なものに求めるのではなく、「温故知新」―自らの内部に根ざした
 もの、先人の知恵が蓄積された伝統の中にある価値を虚心に見つめ
 直し、ここから見出していくことが大事になると考えます。

               ◇

 きもの心、和の心。
 1年を24もの季節に敏感に感じ分ける繊細な感性。これは、自然
 への慈しみ、感謝につながり、弱いものへの優しいまなざしにつな
 がります。
 米沢、置賜(山形県南)地域には、「草木塔(そうもくとう)」と
 いって、自然の木や草花を供養する搭が数多く残されています。

 また人智をはるかに越えた自然の営みへの畏敬は、人間より大きな
 ものの存在を確信させ、時に高い理想へ一身をゆだねる高度な公私
 関係の基礎になったものと思われます。

 「襟を正す」「折り目正しく」などの言葉がありますが、男の公的
 装いである袴姿は凛と気持ちを引き締め、装う側にある種の覚悟を
 求めます。
 
 「仁」という愛徳を以て治め、「忠」の義により理想に身を委ねる
 武士道精神は、紋付き袴スタイルであればこそ心に宿ったエスプリ
 であったと考えます。

 かつてそう遠くない昔に「日本は礼儀正しい国だ」との評価を得て
 いた時代があり、当時は明らかに先進諸外国よりも低い生活水準で
 あったり、オリンピックでの獲得メダルが今よりもっと少ない状況
 であっても、日本や日本に住まうことに対して誇りを持ち、堂々と
 背筋を伸ばして相対峙出来る風土が感じられましたが、これも上記
 の様な武士道、和の心の精神基盤があってこそであったと考えます。

               ◇

 今の洋装(スーツスタイル)で四季以上の多様な季節感に対応する
 装いがどこまで可能か。
 もしきものであるならばどうか。

 また、折に紋付きを着て身(アイデンティティ)、覚悟を明らかに
 する装いの意義は。
 果たして紋付き精神の装いであれば、真夏の屋外で放置された牛乳
 を再度用いて顧客の口に届けるなどという堕落があり得たかどうか。

 こういったところから、きもの心、和の心の奥深さについて、また
 単に形だけではないきものの魅力について、みなさんと一緒に考え、
 探って行くことが出来ればと考えているところです。


 現在のゆかたブームに見られる様に、きもの風というか、きもの型
 の服を大量ミシン生産しシーズントレンドで廉価に提供する方法は
 さほど難しくなく、従来のきもの業界とは別にアパレル主導で進む
 ことも考えられます。

 しかし、きものを“単なる打ち合わせスタイルの衣服”以上のもの
 と捉えて、その心の部分を提案、共に探っていく方向を見据えるの
 ならば、各地域における呉服店の役割は将来的に非常に大きくなり
 広がって行くものと考えます。


 私、微力ながら、そうした想いをもつメーカー、流通、ユーザーの
 みなさんとの間で連携、交流を深めつつ、きもの心を再発見し現代
 に再構築する動きをナビゲートしていきたいと考えております。

 本年もよろしくお願い申し上げます。

               ◇

 【参考】
 草木塔ページ
  http:// www.ne.jp/ asahi/ yamagata/ info/ yamadera/ fuga-somoku.htm


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 その他
 
 米沢はもともと雪の多い地域ですが、やはり今年は特別です。
 一部では60年ぶりとの声を聞くほどの大雪で、近年のおとなしい
 雪量に慣れた市内ではてんやわんやの状況もあり、あらためて自然
 の大きさを実感させられます。

 実は昨年秋の段階で、芋煮会等で集う郊外施設において大量のカメ
 ムシの歓迎にあい、「カメムシ大量発生の冬は大雪」との伝承情報
 を得ていました。

 米沢はいつの冬でも大雪だから… と高をくくっていた訳ですが、
 この現状を見てあらためて伝承情報の意義、奥深さに触れた思いを
 しました。

 きもの心 の魅力、奥深さとも共通する部分の様に思います。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================
  
 
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は345通(メールアカウント)でした。

 
[41] 長根英樹 メールマガジン - No.0015 -2000.11.24 号
 1 長羽織の魅力
 2 「美しいキモノ- 冬号」〜 スタイル紹介
返事を書く
    2000.11.24 12:46

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.11.24 No.0015  配信数:0345  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 長羽織の魅力
 2 「美しいキモノ- 冬号」〜 スタイル紹介
 3 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 長羽織の魅力

 こちら米沢は初雪も迎えいよいよ秋から冬へ、季節のバトンタッチ
 の時季となりました。

 秋冬の装いは、表地&裏地の組み合わせの他にも小物なども含めて
 アイテムが増え、構成要素が多彩になりコーディネイトの楽しみが
 深まります。

 長着&羽織の基本アイテムの他に、インナーにシャツやニット等を
 合わせたり、袴、コート、マフラー/ストール、肌着、履きもの、
 手袋、帽子などの組み合わせにも工夫しつつ、色/素材感/バック
 ボーンイメージ等のバランスやストーリーの面で、トータルのコー
 ディネイトを自分らしく自由な発想で、暖かく楽しみたいものです。

               ◇

 洋装のジャケットと同様に、羽織には、長着の上から羽織ることで
 装いを整えるという意味合いがありますが、秋冬の羽織はこの他に
 防寒の役割も大きくなります。

 羽織の丈は、時代による大きなトレンド、フォーマル/カジュアル
 の違い、各人の好み等により一様ではなく、長短それぞれのスタイ
 ルがありますが、かつて大正から昭和初期のスタイルは現代よりも
 随分と長く、ゆうに膝下まである長羽織スタイルが一般的だった様
 に見受けられます。

 今一度、かつて見られた長羽織の魅力を見直し、秋冬の袷羽織とし
 て、防寒の意味合いとともにそのエレガントなシルエットを楽しみ
 たいものだと思います。

               ◇

 ここで、長羽織の丈、全体のシルエットについてですが、ゾロッと
 間延びした印象にならない様にするためには、丈の長さだけでなく、
 前丈と後ろ丈のバランスがポイントになると思います。

 “前下がり、後ろ上がり”の美意識は、角帯の締め方や袴の着付け
 (裾ライン)だけでなく、洋装ジャケットの丈バランスにおいても
 同様で、シルエットをキリリと整えるポイントとなります。

 長羽織の仕立ての際には、「前下がり」(後ろ丈よりも前丈をどれ
 ぐらい長くするかという差分)の寸法に留意して、通常よりも少し
 大きめに取ることをお勧めいたします。

 これにより、長羽織特有のエレガントさとともにシャープさを兼ね
 備えたスタイルが得られるものと思います。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 「美しいキモノ- 冬号」〜 スタイル紹介

 今週発売の雑誌「美しいキモノ- 冬号」(アシェット婦人画報社刊)
 では、「男のKIMONOフリースタイル」のテーマで、自由な発想に
 よる男のきものの特集が組まれています。

 男性のきものスタイルは、とかく単調で面白みの少ないものの様に
 捉えられる傾向を感ずるところですが、一口にきものと言っても、
 それこそ士農工商、ハレもケも、雨の日も雪の日も、各人の生活に
 根ざして着用されていた装いですから、本来は実に多様で、様々な
 デザインや素材/色使い、コーディネイトの妙など、多彩で洒落心
 のエッセンスの詰まった幅広く奥深いものであったと思います。

 ここに来て市場でも、“男のきもの=紬のアンサンブル”といった
 枠組みを越えて、本来あった男のきものの多彩さを現代的な解釈で
 再構築した意欲的な供給提案が一部に見られる様になってきました。

 今回の特集は、和装視点のこうした新たな供給提案の紹介に加え、
 大胆に洋装アイテムも組み合わせて紹介することで、自由な発想の
 コーディネイト、新世紀のきものスタイルを提案するものになって
 います。

 実際にこの様なスタイルを実践している事例紹介のコーナーでは、
 私も取材に協力して、長羽織&野袴スタイルをご紹介しています。
 (P106)

 ご参考に、今回誌面でご紹介したコーディネイトについて、以下に
 ご案内をいたします。

               ◇

 ・長着
   薄青鼠節糸織、「山絲織(やまいとおり)」:米沢 鈴源織物

   野蚕繭(やさんまゆ:野生の蚕からとった繭)から座繰り引き
   (繭を湯で煮て、柔らかくなってきたところを手で糸引きする
    手法)にてとった糸を用いた紬(節糸織:ふしいとおり)。

   野蚕糸は糸質が太く不均一で、節糸織はところどころに野趣に
   富んだ節(ネップ)が見られるが、他の部分は長繊維の糸であ
   り、繭をフェルト状(真綿)にしてから糸を引きだして織った
   真綿紬(結城紬など)の毛羽感のある素朴な温かみとは違い、
   独特の底光りするような光沢とスッキリとした表情が魅力。
   
   織り密度も高く非常に丈夫な織物で、贅沢だが寛ぎのきもの、
   お洒落着として満足度の高い品と言えるかと思います。


 ・羽織
   藍紺変わり御召、「騎射(うまゆみ)」:米沢 鈴源織物

   濃淡の糸を使い、立体的に縦シボを表現した変わり御召。
   色の濃淡とシボの凹凸による光の含み加減で微妙に移ろう玉虫
   調の表情が魅力。

   膝下たっぷりの長羽織スタイル。
   スラリと節のない絹糸を使った御召ならではの光沢感と流れる
   様なシルエットにより、ノスタルジックなエレガンスを感じさ
   せる装いに。


 ・インナー
   今回は襦袢ではなく、スタンドカラーシャツ&アスコットの洋
   装アイテムを合わせての和洋折衷スタイル。
   
   アスコット風にあしらったのは、青山の骨董通りで求めた古裂
   で、おそらく女性の帯揚げに用いられたものと思います。
   帯揚げは薄手の絹地が多く、現代のものでも色味の渋いものを
   選びインナーストール感覚で合わせても面白いかと思います。

   襦袢には重ね着の防寒の意味合いもありますが、長着が直接に
   肌に接しない様にする防汚の大きな役割がありますので、イン
   ナーにシャツやニットなどを合わせる際にもこの点に留意した
   いものです。

   具体的に、袖口の汚れは襦袢よりも防げると思いますが、襟元
   が課題となり、スタンドカラーシャツの場合、後ろ襟の高さは
   5cm位は欲しいところです。
   既製品ではこれだけ襟の高いシャツがあまり見あたりませんの
   で、私は誂えで着用しています。

   スタンドカラーシャツの他に、ハイネックやタートルネック等
   の薄手のニットも重宝するものと思います。
   木綿や麻など、家庭で洗濯や手入れが可能なきものの場合は、
   TシャツやVネックシャツなどを合わせてラフに着こなしても
   いいかも知れません。

   こういったインナーの自由な合わせは、女性よりも男性の方が
   冒険が可能で抵抗感が少なく楽しめる部分かも知れません。

   風通しのよい仕立て構造のきものは、秋冬にスースー風が入り
   寒い面もありますので、防寒の意味合いからも風の侵入を防ぐ
   インナーの工夫は重要な部分と思います。


 ・野袴
   青鼠紬袴、「鷹匠袴(たかじょうばかま)」:米沢 鈴源織物

   たて糸にスラリとした絹糸、よこ糸に紬糸と特殊な撚によって
   細かい“ヒゲ”を表現した“カール撚糸”を用いて織り上げた
   凝った袴地。

   絹糸による光沢感と紬ならではの節(ネップ)、カール撚糸の
   微妙なヒゲの3要素が絶妙なバランスで渾然一体となった表情
   が魅力の無地袴です。

   裾をスリムにしたズボン風のシルエットで活動性を高めつつ、
   本格的な前襞(ひだ)取りで袴特有の凛とした雰囲気に着姿を
   整えます。


 ・羽織(上)
   黒ウール長羽織。

   洋装幅広(スーツ)生地のウール素材を用いた長羽織で、真冬
   のコートコーディネイトを前に、ハーフコート感覚で羽織の襲
   (かさね)として着用しています。

   コートほど大げさになりませんが、ウール素材で暖かく、室内
   着用でも違和感がありませんので、小寒い時季に重宝する一枚
   です。


 ・帽子/ストール/手袋
   ミディアムグレイのソフト帽。
   グリーングレイ基調のシルクストール。
   ジャージニットの黒手袋。


 ・編み上げブーツ
   プレーンストレートチップの黒編み上げブーツ。

   他に、ジョッパーズブーツやサイドゴアブーツなどを合わせて
   も面白いものと思います。

   私は、本格的な米沢の雪道では長靴も合わせて冬のきものスタ
   イルを楽しんでいます。

               ◇

 【参考】
 米沢 鈴源織物有限会社  http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/
 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 3 その他
 
 ここに来て、供給側、ユーザー共に、きものを一つのファッション
 アイテムとして捉えて、それぞれに自由な感性で楽しむ流れが見え
 始めた様に感じます。

 もともと決して固定的な装いではなく、時代々々に応じて多様性の
 あったものが、着用機会の減少から極度にパターン化され、生活着、
 ファッションからかけ離れ、特定の衣装の様になってしまった状況
 があるものと思います。
 しかし新世紀を前に、あらためて“着るもの”としてきものを見直
 し、素材やデザイン、仕立て、コーディネイト等の面で、現代的な
 視点からの解釈により個々人のスタイルに応じた楽しみ方向が模索
 され始めた状況を、心強く、わくわくした気持ちで受けとめている
 ところです。

 今後は、きものとの接し方、供給などの面で多様化が進み、ユニク
 ロのカジュアルやアオキのスーツの様な“アパレルきもの”という
 方向性も出てくるものと思います。
 この様に多様化が進むとき、一方であらためて従来の蓄積を踏まえ
 た伝統的なものの本質(スピリチュアルな)部分を探る動きも出て
 来るものと思います。

 スタイルは各人各様ですからそれぞれの方向性に応じつつ、供給側
 とユーザーが互いに交流連携して新たな価値を見いだしていく恒常
 的な流れを作っていきたいものだと思います。
 ユーザーも着て楽しい、メーカーもつくって楽しい、流通も商い
 (提案)して楽しいという形で、相互刺激の中からそれぞれがそれ
 ぞれの立場できものを楽しむ状況が理想形であり、基盤のしっかり
 とした成熟期へ繋がっていくものと考えます。

 みなさんとご一緒に、こうした善循環を模索していきたいものだと
 考えているところです。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================ 
  
 
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は345通(メールアカウント)でした。

               ◇




 
[40] 長根英樹 メールマガジン - No.0014 -2000.10.10 号
 1 秋はじめの袷(あわせ)
返事を書く
    2000.10.11 11:47

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.10.10 No.0014  配信数:0334  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 秋はじめの袷(あわせ)
 2 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 秋はじめの袷(あわせ)

 こちら米沢は10月に入りすっかりと秋の気配。
 週末の河原では風物詩の芋煮会を楽しむグループの姿がみられます。

 例年、秋にはじめて袷のきものに袖を通す際には、長い冬を迎える
 −いよいよと身構える様な緊張感−と共に、あれこれとアイテムが
 増えお洒落の楽しみが増えるなという−わくわくとする高揚感−を
 覚えます。

 盛夏、単衣の軽やかなきもの姿とは別に、裏地をつけて仕立てた袷
 のきものはシッカリとした着用感、表地と裏地のコーディネイトの
 楽しみ等が大きな魅力です。

               ◇

 一口に袷のきものといっても様々な素材のものがありますが、やは
 り秋はじめの袷としては、スッキリとした糸使いのきものが気分に
 マッチして心地よく着られます。

 糸使いの違いによる紬、織物の種類、表情魅力については、バック
 ナンバーの9号をご参照いただきたいところですが、繭を煮て薄く
 フェルト状に伸ばした真綿(まわた)から引いた真綿紬糸は暖かみ
 のあるふっくらとした表情が魅力となりますので、秋はじめよりは
 もう少し先の寒さ本番の季節に持ち味がいきると思います。

 一方、繭のままの状態から糸を引いた生糸、玉糸(座繰り糸)は、
 (玉糸の場合はところどころに節が見られるものの、)絡み合いの
 ない絹ならではの長繊維の糸質がストレートに表現され、艶やかな
 光沢のあるスッキリとした表情が魅力です。


 ここで、真綿紬糸を用いた紬でも一部の糸に絹糸を織り込んだ織物
 もあり、こういったものは光沢感があり大分スッキリと洗練された
 表情になりますので、秋はじめの袷にも馴染むものと思います。

 紬以外にも、絹糸使いの糸織(いとおり)もの、御召などは、冬も
 含めて袷の季節を通して活躍するきものですが、秋はじめの気分に
 見合う織物と思います。


 私はこの時季、大島、節糸織(座繰り玉紬)、御召などを着用して
 秋の気分を楽しんでいます。

               ◇

 バックナンバー No.0009(2000.02.29)号 
 「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
  ・大人の男のきもの談義
    http:// www.kimono.gr.jp/ mens/ salon/ 35_index_msg.html
 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 その他
 
 「秋大島に春紬」という言葉にもみられる様に、秋には大島の様な
 スッキリとした表情のきものを着て、春(新春、冬の寒い時季)に
 結城紬の様なふっくらと暖かみのあるきものを着るという、季節に
 応じた着分け、素材の微妙な持ち味を楽しむ装いの文化は、先人の
 繊細な感性とつくり手の技の蓄積が生んだもので、きものの奥深い
 魅力の大きな構成要素であると思います。

 日本ならではの季節感、あるいは美意識、風習に根ざした装いとし
 て時代々々に洗練を高めてきたきもの。

 きものを単にその形や素材の面で捉えるのではなく、こころの部分
 も含めて味わい、魅力を探っていきたいものだと考えています。


 先人の蓄積。洒落心や美意識といった面はかしこまった文章よりも
 口伝えで伝わる部分が多く、今後はこの伝承が非常に難しくなって
 いくものと思います。

 きものごころ伝承最後の時代、ユーザー、流通、つくり手の立場を
 越え、互いに虚心な気持ちで識者の話に耳を傾け交流を深めていき
 たいものだと考えているところです。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================
 
 
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は334通(メールアカウント)でした。

               ◇



秋はじめの袷〜大島のお対で  会津若松市 鶴ヶ城にて

 
[39] 長根英樹 メールマガジン - No.0013 -2000.08.30 号
 1 更衣 〜 羽織と長着の追いかけっこ
返事を書く
    2000.08.30 08:47

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.08.30 No.0013  配信数:0322  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 更衣 〜 羽織と長着の追いかけっこ
 2 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 更衣 〜 羽織と長着の追いかけっこ

 7月は夏休みをいただきまして2ヶ月ぶりのご案内となります。
 米沢も日中は暑いのですが夜は大分涼しくなり、ススキやコスモス、
 赤トンボに虫の音と秋の気配が感じられる頃となりました。
 北国の秋は駆け足でやってきますので、そろそろ頭の中は、単衣、
 袷もののコーディネイトに向かっています。

 さて更衣。
 通常は四季の分類で語られることが多いかと思いますが、24もの
 季節の移り変わりを感じる繊細な感性を持つ先人の技、しゃれ心の
 蓄積をベースにするきものですので、もう少し微妙な着分けを楽し
 む方向もあろうかと思います。

               ◇

 季節感は、羽織、長着の他に、帯、袴、半襟、襦袢など様々なアイ
 テムで総合的に表現して楽しむものですが、ここでは羽織と長着の
 取り合わせについて考察。

 お稽古事などでの着用ではなく、個人として自由に装いを楽しめる
 立場での着用であれば、(体調や地域、その日の天候などにもより
 ますが、)8月中はもちろんですが、9月に入っても絽や紗、粋紗
 等の“薄もの”の長着&羽織の取り合わせでよろしいかと思います。

 その後、暑さも落ち着いてきたら長着を単衣にし、羽織はしばらく
 の間薄ものでコーディネイト。
 やがて、羽織も単衣ものとして、単衣長着に単衣羽織の取り合わせ。

 袷の季節も、最初は長着を袷とし羽織は単衣ものをコーディネイト。
 その後、袷長着に袷羽織の取り合わせ。

 長着が一歩先に、羽織が後から追いかける形になります。

 かつては、真冬に綿入れ仕立てがありましたので、この際も同様な
 形で。

 春になり単衣への移行となると、今度は逆に、羽織が一足先で長着
 が後から続く追いかけっこに。

 まず、袷長着で羽織から単衣ものに。
 その後、単衣長着と単衣羽織の取り合わせ。

 暑くなるとまず羽織が薄ものとなり、単衣長着と薄もの羽織の取り
 合わせ。
 夏には薄もの長着と薄もの羽織の取り合わせ。

 この様に、更衣は決して年を4つに分ける様な杓子定規なものでは
 なく、羽織と長着との追いかけっこで微妙に季節の移ろいを調整し
 ながら、心地よく装う工夫が詰まったもので、更に奥深い季節感の
 表現などもあります。

               ◇

 羽織と長着の関係を考えると、長着に対して羽織はまさしくはおる
 もの、重ねて装いと整える上着となりますので、紬の長着に御召の
 羽織など、格という意味では羽織が勝る取り合わせとなります。
 (時に、羽織をコート感覚で装う場合もあり、羽織二枚襲の上羽織
  など、防寒視点で合わせられる場合もあり得ます。)

 これとは別に更衣という視点で見ると、羽織と長着は同種となるか、
 あるいは羽織の方が薄くなります。
 (薄ものの長着に単衣の羽織や、単衣長着に袷羽織となると、ちぐ
  はぐな印象となります。)

 この意味で、春から夏には羽織が先で長着が後からの追いかけっこ。
 秋から冬には、長着が先で羽織が後からの追いかけっことなります。
  
 この関係は羽織に限らず、基本的には袴においても同様となります。
 (現在、袴はほとんどが単衣仕立てで袷袴は身近でないことと思い
  ますが、単衣袴から薄もの袴:絽袴、紗袴への移り変わり、逆に
  薄もの袴から単衣袴への移り変わりの際に羽織同様の移行となり
  ますので、参考になるものと思います。)

               ◇

 これらを踏まえ、例えば今の装いを考えると、まだまだ暑いので、
 薄ものの長着に薄ものの羽織の取り合わせでよろしいかと思います
 が、一口に薄ものといっても透け具合には様々なものがありますの
 で、9月の残暑ということで長着は透け具合の控えめな絽や粋紗に、
 羽織は涼しく透け味の大きな紗に、などという形で薄ものの着分け
 を工夫しても楽しいことかと思います。
 
 (更衣には様々な意味合い、捉え方があります。
  お稽古事などで、日にちを決めて当日の天候にかかわらず一斉に
  装いを替えることも、集団における固有の美意識の共有になろう
  かと思いますので、意義あることと捉えます。)

 
 ここで、一般に絽は透け具合が少なく、紗は透け味が大きい、羅は
 更に大きく透けると捉えられますが、同じ絽織り、紗織りでも様々
 なバリエーションがあり、透け具合、トータルな印象も様々ですの
 で、織りの分類名にとらわれることなく、実際のきものの表情をみ
 てコーディネイトを考えるのがよろしいかと思います。

 例えば、紗羽織といっても糸に節の大きな真綿紬糸を用いた凝った
 織物もあります。
 これなどは真綿紬糸のふっくら感、大きな節で透け味が薄れること
 などから、同じ紗羽織でも盛夏というより、単衣の始まり、終わり
 が似合うものになろうかと思います。

 また、実際の気温はまだまだ暑い9月後半、薄ものの羽織を着たい
 が、体感温度だけでなく変わりつつある自然の様子も踏まえどこか
 秋のニュアンスも取り入れたい… かつては、こんな気持ちを表現
 する織物もありました。
 特殊な撚(より)によって細かいヒゲを表現した“カール撚糸”を
 一部に織り込んだ絽織物で、「カール絽」などと呼ばれていたもの
 ですが、夏にきもの着る方が少なく、特にこの様な微妙な季節感の
 着分けを楽しむ着道楽人の需要が少なくなったせいか、最近はなか
 なか見つけることが出来ません。

 少数ながら、現在でもこういった趣のある織物を求める需要も存在
 するものと思いますので、これなどは、前回(No.0012 号にて)
 ご案内した「ネットによるユーザーニーズの集約から復刻版制作」
 という様な、ユーザーとメーカーのマッチングが重要になる部分と
 思います。

 日頃の着用体験から、現在はなかなか見つけられないきものでも、
 こんなものがあったらいいなと思う様なものがありましたら、是非
 「大人の男のきもの談義」のコーナーにご投稿下さい。
 みなさんのご要望、一つのアクションがきっかけとなり、ユーザー、
 ショップ(流通)、メーカー3者の交流、あらたな関係が模索され
 きものの楽しみ環境が高まっていくことを期待しています。

 「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
  ・大人の男のきもの談義
    http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html
 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 その他
 
 きものの世界のユーザー、流通、メーカーの関係。
 メーカーはあまりに流通への依存を高めたために、ユーザーニーズ
 の把握の面で大きくミスマッチが生じている可能性があります。

 男のきもの、凝ったきものなど、本当にニーズがないものなのか。
 少ないながらも底堅いニーズがあり、うまく繋ぐことにより生産の
 サイクルが回るものなのか。

 ユーザーが声を出し、要望を出すことで少しずつ動き始める可能性
 もあります。
 ネットはそんなユーザーの要望を集約してアピールする絶好の舞台
 だと思います。

 真の意味でのネット活用。
 ユーザーの立場でも、流通、メーカーの立場でも、この模索が重要
 になるものと思います。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================
 
 
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は322通(メールアカウント)でした。

 
[38] 長根英樹 メールマガジン - No.0012 -2000.06.30 号
 1 きもののブランド選択
返事を書く
    2000.07.01 01:22

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.06.30 No.0012  配信数:0326  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 きもののブランド選択
 2 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 きもののブランド選択

 東の「鈴源」、西の「鳥居」。
 といわれる様に、男のきものの世界でもその品質、歴史、ポリシー
 等により、多くの信頼、評価を得ている“ブランド”があります。

 商品選択の際には、百貨店/専門店等でこうしたブランド品を見て、
 触って、一つの基準(スタンダード)として確認した上で他の品と
 比較して判断することをお勧めします。

 一定レベルの比較基準を持つことで、対象商品の特徴、位置づけが
 分かりやすくなったり、用途に応じて選び分けが出来たりと、比較
 のない単品判断による商品選びに比べ購入の納得度が高まるものと
 思います。

               ◇

 ソニーのビデオ、ホンダのスポーツカー、ビームスのスーツ、ユニ
 クロのカジュアル…など、通常の商品購入の際には、品質の安心感
 /信頼性、ポリシーへの共感等の意味から、自然とブランドを意識
 した購買選択がなされているものと思います。

 このブランド選択は、女性方のシャネルやグッチ等のいわゆる海外
 デザイナーズブランド品に限らず、日常用品の石けん、シャンプー
 から味噌、しょう油等に至るまで、あこがれやこだわり、あるいは
 お気に入りということで、ごく自然に商品選びの判断要素になって
 いることと思います。

               *

 ブランド認知のステップ。
 20年ほど前、アーノルドパーマーの刺繍ソックスをブランド品と
 して自慢げにはいたり、同じ3本線のスポーツウェアでもスペルが
 1文字違うものがあったり、バレンチノといえば○○バレンチノや
 バレンチノ△△など様々なバレンチノがあったり…などという初期
 の混沌時代があった様に思います。

 供給側の立場でブランドアイデンティティやブランド価値等を訴求
 する意味でも、あるいはユーザーの立場で様々なブランドの特徴を
 理解しお気に入りを見つけだす意味からも、ブランドを使いこなし
 うまく付き合っていくには時間と蓄積が必要になるものと思います。

 様々なブランドを実際に使う中で各ブランドの特徴、比較が見えて
 きたり、知人の参考意見とか、各メディア等でブランド紹介が出て
 きたりと、そういった一つ一つの積み重ねの上で、ブランドの絞り
 込み、使い分けが行われていくものと思います。


 きものの場合、着付け、折々のコーディネイト、メンテナンスから
 品選びまで、親から子へとの世代伝承がほとんど行われなくなり、
 今や海外のブランド品よりも縁遠いものになっている状況がある様
 に思います。
 
 かつて、時間をかけ、洋装品や車、お酒などのブランドを理解し、
 用途に応じて使い分けてきた様に、今後きものにおいてもあらため
 てブランドを意識した選択を行うことにより、試行錯誤等も踏まえ
 つつ、やがて一定の基準を持ち商品選びが行われる様になるという
 蓄積のステップが必要になるものと思います。

 メーカー、ショップをはじめ、メディアやユーザーもきもののブラ
 ンドを意識していく中で、現状の産地ブランドといった捉えから、
 同じ産地でもどこの織元かというメーカーブランド、またショップ
 ブランドなど、より深い形で商品の質を見極める流れが進むものと
 思います。

 これによりブランドの供給責任の明確化が求められ、従来今ひとつ
 不明朗だった価格や品質についても透明性が増していくものと思い
 ます。
 (きもの雑誌等でも、紹介商品の販売先:メーカー/ショップや
  価格が、当然の様に表記される様になってくることでしょう。)

               ◇

 きもののブランドという場合、結城、大島、西陣、米沢など、生産
 地域で括った産地ブランドや、店毎に誂え染め等で独自色を出した
 ショップブランドという捉え方が主流だった様に思います。

 一方、例えばワインの場合、フランスワイン、ドイツワイン…など
 大まかな生産地域による特徴の違いもありますが、更に各シャトー
 (メーカー)毎にも独自の創意工夫、クリエイティブの探求を行い
 切磋琢磨して特色を出していますので、産地だけで選ぶのではなく
 メーカーにも注目して商品選びをしていることと思います。

 これは、同じバーボンといっても、ブラントン、ハーパー、グラン
 ダッド、フォーロゼス…などと好みの違いがあり、やはりメーカー
 によって選択をしている状況にも通じるものと思います。


 同じ様にきものの場合も、同一産地といえども、各織元(メーカー)
 毎に様々な創意工夫、独自のポリシー等により、クリエイティブを
 競っています。

 男のきものの場合、織りのきものが大半で、織元毎に特色が表れる
 部分が大きいので、メーカーブランドという視点で捉えると分かり
 やすいものと思います。

               *

 従来からきものメーカーは長期縮小傾向にあり、現状で男のきもの
 をメインとしているメーカーはそう多くありません。

 その男ものメーカ−でも、帯メーカーや袴メーカー等と効率重視の
 立場から専門特化が進んでいる状況にあり、幅広いラインナップで
 男ものを作っている総合メーカーは本当に極わずかです。

 そんな中、米沢の鈴源織物、西陣の鳥居良は、幅広いラインナップ
 を揃えた日本を代表する男のきものメーカーといえると思います。

 米沢 鈴源織物有限会社  http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/
 西陣 鳥居良株式会社


 他にもそれぞれにこだわりを持ったブランドがありますが、今回は
 総合メーカーとして以上の2社をご案内いたします。

 是非一度幅広い製品ラインナップをトータルで体系的にご覧になり、
 男のきものの奥深い魅力を再発見していただきたいと思います。

               *

 きもののメーカーブランド。
 メーカー毎に色目の系統に特徴があったり、地風の面でも独自の技、
 こだわり等がありますので、コーディネイトを考えたり、着心地が
 気に入っている場合、ブランドを意識して覚えて、それを選ぶこと
 で、次回もしっくりと気持ち良く着られるということがあります。

 また、総合メーカーのラインナップを一つ一つ体系的に見ることで、
 メーカーポリシーが見えてきたり、あるいは非常に繊細なコーディ
 ネイトの奥義の様なものが見えてくる場合もあります。

 一口に紬、御召といっても様々な表情があり、それに応じた活躍の
 場も違って来ますし、また袷/単衣/盛夏という四季分類に加え、
 更に二十四節季を感じ取る繊細な感性を踏まえた微妙なニュアンス
 を表現する様な織物もあります。


 かつて日本のダンディ、着道楽人達は、こういったプロ(メーカー
 やショップ)との交流を大事に活かして要望を伝え、またプロ達も
 これに応える様なクリエイティブ、提案を行う相互循環の中で素晴
 らしい蓄積をなしてきたものと思います。

               ◇

 ブランド主体の重要性。
 現状では一般に「大島のきものを買った」「博多の帯を買った」と
 いう様な話しは聞きますが、どこのメーカー(ブランド)のものを
 買ったという話は、きものの場合あまり聞きません。

 しかし、メーカーは同一産地内でも切磋琢磨しそれぞれにクリエイ
 ティブを深めていますので、この現状は少々寂しいものと思います。

 皆さんのビジネスを振り返ってみても、同業他社/他人と比べて、
 どこも大して変わらないという様な選択をされるとしたらガッカリ
 としやる気も失せるのではないでしょうか。
 またそれは、安易な取り組みを助長することにも繋がります。

 せっかくメーカーが頭をひねり、あるいは手間を惜しまず創り上げ
 たとしても、「産地が同じなら大して変わらない」とか、「紬は紬、
 御召は御召、色味が合えば何でもいいんじゃない」などという選択
 が主流になると、「それ見たことか、ユーザーに選択眼はない」と
 ばかりに安易なつくりの商品が横行します。

 そして、吟味生産のメーカーが苦しくなりやがて淘汰されていき、
 残るは安易なつくりのメーカー、口八丁、値引き合戦のショップと
 なり、ユーザーにとっても不幸になる悪循環が固定化するおそれも
 あります。


 市場、業界秩序というものは、ユーザーの選択と離れたところで形
 づくられることはなく、現在のきもの業界の在り様も(かつての)
 ユーザーの選択の結果といえるものと思います。

 将来のきものの楽しみのために、これからどの様な選択をし、どう
 いった姿勢の供給側(メーカー、ショップ)を支持、応援して共に
 いい関係、在り方を創り上げていくか、ユーザーにも問われている
 部分だと思います。 

               *

 きもの村では、ユーザー、ショップ(流通)、メーカー3者の交流
 体制が重要だと思っています。

 ものを深く楽しむためには、供給側とユーザーが相互に刺激し合い、
 つくる楽しみ、商い提案する楽しみ、着る楽しみを広げ循環させて
 行く関係の中から、互いに楽しみ環境を創り上げ高めていくという
 共創(コラボレーション)の姿勢が求められると思います。

 日本人ときものとの関わりという意味で、かつての日常着が、現状
 では普段着の着方すら教室に通わないとなかなか思う様にならない
 という大きな文化の断絶を感じる世紀末ですが、インターネットの
 普及によりユーザー、ショップ、メーカーがそれぞれに想いを持つ
 個々人の立場で交流する環境が飛躍的に進んだ今、私は21世紀に
 あらたな関係を再構築出来得るのではないかと大きな期待をもって
 いるところです。


 例えば出版の世界では、既に絶版となった出版物をユーザーニーズ
 の集約により復刊させて行くという形で、ユーザーと供給側を繋ぐ
 役割を目指すサイトが登場してきています。

 復刊ドットコム  http:// www.fukkan.com/


 きものの場合も同様に、ユーザーと供給側を繋ぎ、かつての逸品を
 復活生産したり、あるいは時代に応じた製品をあらたにつくり出し
 たり、また今ある製品の特徴を的確に伝え/比較検討の出来る情報
 センター機能を果たしたりする“ネット仲介センター”が求められ
 大きな役割を果たすものと考えています。

 これには、それぞれの分野の生産、提案という意味合いから各産地
 メーカーの参加も重要となり、また幅広いユーザーニーズを集約し
 共同発注(ロットでの買い取り)を行う為にはショップ(流通)と
 ユーザーの広がりも重要となります。

 きもの村では、微力ながらこのネット仲介センターの構築に向けて、
 ユーザー、ショップ(流通)、メーカー3者の交流コミュニティの
 コーディネイト役を目指し活動、提案をしているところです。


 きものを愛し、想いを同じくする仲間と、それぞれの立場を越えて
 あらたな方向を模索していきたいと考えています。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 その他
 
 季節の移ろいを装いを通して味わい堪能するという意味で、日本の
 四季とそれに応じた多彩な織物は、まさに天の恵みと先人達の技や
 繊細な感性、洒落心の蓄積のたまものと有り難く思うところです。

 先日の選挙、天気にも恵まれ絽の野袴をつけて出かけて来ましたが、
 季節のメリハリと共に凛としたこころの高ぶりと落ち着きを味わい
 リフレッシュすることが出来ました。

 これから暑い日が続きますが、夏織物で20世紀最後の夏を存分に
 楽しんでいただきたくご案内いたします。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================
 
 
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は326通(メールアカウント)でした。

 
[37] 長根英樹 メールマガジン - No.0011 -2000.05.22 号
 1 夏織物の魅力
 2 メーカーのみなさんへ
返事を書く
    2000.05.22 12:00

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.05.22 No.0011  配信数:0321  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 夏織物の魅力
 2 メーカーのみなさんへ
 3 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 夏織物の魅力

 こちら米沢は、例年より少し遅くれた桜も終わり新緑のさわやかな
 季節となりました。
 まだ冷えてストーブを使うときもありますので袷のきもの(長着)
 が多いのですが、晴れた日中は単衣のかろやかな着味が心地よく、
 夏織物が待ち遠しく感じられます。

               *

 男性の場合、洋装スーツときものとの違いは、基本的なデザインの
 違いの他に、素材(織り設計)の面での違いも大きいと思います。

 緯度だけで気候ははかれませんが、東京の緯度はギリシャのアテネ、
 イランのテヘラン、スペイン/モロッコ間のジブラルタル海峡辺り
 となります。
 洋装夏素材のモヘヤ、サマーウールといえども日本の夏には暑く、
 英国ジェントルマン流儀に習い長袖シャツでスーツを着こなすには
 必然クーラーのお世話になるところ大きく、エコロジカルな循環の
 面からも負担が大きい様に感じます。

 その点きものの場合は、日本の蒸し暑い夏を前提として素材づくり
 (織り設計)がなされ、心地よい様にと工夫伝承されてきた蓄積が
 ありますので、洋装では通常男性素材として用いられることのない
 シースルー(透け)素材をはじめ実に多様な夏素材が見られます。

 素材原料に絹(シルク)を多く用いる点、また夏用素材の多様さと
 いう面で、洋装スーツときものでは素材使いに大きな違いがあり、
 その意味で夏織物はきものならではの醍醐味を味わえるという点で
 究極の素材といえるかも知れません。


 実際、盛夏に黒の透け羽織の下から薄色の長着がモアレ模様と共に
 浮き出る様にはゾクっとする様な男の色気を感じます。

 同じく、暑い夏の日に涼感爽やかに透ける夏袴スタイルには、凛と
 背筋の通った男性ならではの志を感じます。

 男の凛とした気概と共に、色気やしゃれ心、美意識が詰まった日本
 ならではのダンディズム。
 洋装には見られない夏素材のきもの姿は、この日本のダンディズム
 がひときわ浮き立つ装いとなる思いがします。
 

 今年夏、是非薄く透ける繊細な夏織物で、日本の暑さを着楽しんで
 いただきたくご案内いたします。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 メーカーのみなさんへ
 
 きものへの想いを同じくし、安心してつくって、安心して商って、
 安心して選び購入して、楽しんで着るという、メーカー/小売店/
 愛好家(ユーザー)の3者連携により、きものを豊かに楽しむ環境
 をレベルアップさせて行く“螺旋循環ネットワーク”の構築運営を
 目指す「きもの村」。

 今は地元米沢の織元仲間と連携して提案を進めているところですが、
 今後米沢に限らず広く男のきもの、織のきものという事で、各産地、
 各メーカーとの連携を広げて集積を高め、愛好家のみなさんに向け
 それぞれに特色のある多様なきものの魅力を、幅の広いトータルな
 ラインナップで提案していきたいと考えているところです。

               ◇

 メーカーの使命役割、責任ということを考えるとき、
  1 製品の質に対する責任  に加えて、
  2 製品(情報・価格)をきちっとユーザーに届けるという責任
 にも思いを巡らして対応することが求められると思います。

 上記2、具体的には、
  ・製品特徴の説明、着こなし等楽しみ方の提案をする責任
  ・実際に見てさわって納得して選んで、納得して購入出来る様な、
   安心して楽しく買える環境を整える責任
 などがあげられるかと思います。

               *

 この点従来は、流通(問屋、小売店)の役割がしっかりと機能して
 いて、メーカーとしては、流通に対して製品、情報を提供すること
 で、それがユーザー側にも的確に提案され、結果として役割、責任
 が果たされていたという状況がある様に思います。

 しかしながら現状、とりわけ男のきものにおいては流通の役割が、
 品揃え、製品説明、着こなし提案、価格信頼性等の面で機能不全を
 起こしている状況と思います。
 ユーザーのきもの購入における大きな不満も、お店で実際に品物を
 見ることが出来ないという品揃えの少ない点、基本的な製品説明が
 十分に受けられない点、コーディネイトのバリエーション等様々な
 着こなしの楽しみ提案が受けられない点等に集約されると思います。

 これは流通にだけ責を求める筋のものではなく、本来はメーカー+
 流通が互いにプロとプロとしての連携均衡のもと、時に応じ役割の
 分担比率を変えつつも供給側トータルとしてユーザーへ提案の質を
 高めていくべきものと考えます。

               *

 ときにつくり手が、流通の多段階構造や価格の上乗せ率の高さ等を
 あげ、消費者価格の高騰、ひいてはユーザー購入環境の不備を流通
 側の責とする認識を示すことがあります。

 しかしここで、つくり手として誰に対して供給の責任を負うのかと
 いう問題を考えたいたと思います。

 もし、目前の取引先である流通(問屋等)に製品を供給した時点で
 責任が全うされたとするのであれば、製造流通の中における単なる
 “染織工場”という位置づけとなります。
 
 もし、製品の質/供給の両面でユーザー(愛好家、一般購入者)に
 責任を持ち、流通の体制も含めて的確な購入環境の整備提供を図る
 ところにまで経営の範疇を広げて捉えるつくり手を“メーカー”と
 するのであれば、上記の“染織工場”と“メーカー”とでは大きな
 違いが出てくることとなります。

 先のユーザー購入環境の不備を流通側の責とする認識は、染織工場
 としての発想であり、メーカーとしてユーザーに対しての供給責任
 を意識した発想でないことが見えて来ることと思います。

               *

 実際、例えば家電メーカーと量販店、酒造メーカーと量販店の関係
 の例を見ても、メーカーが安売りを牽制してのトラブルはあっても、
 メーカーが高値販売に頭を悩ませる例はあまり耳にしません。

 これは単純な話で、メーカーとして想定小売価格を発表することで
 容易にそれ以上の価格での販売を牽制する事が出来るからです。

 もし、先の流通側に現状環境不備の責を問うつくり手が、本質的に
 ユーザーへの供給責任を意識し、本気で適正販売を望んでいるので
 あれば、オープンな価格発表がなされているものと思います。

 
 現在は、高額のマスメディア訴求を行わなくても、ずいぶん安価に
 インターネットホームページという形で自社独自メディアを持ち、
 容易に情報発信が出来る環境が整ってきていますので、自社製品の
 紹介と価格発表を行うことが可能です。
 また、もっと単純で効果ある方法としては、製品ラベルに製品名や
 品質表示とともに価格を記すという方法も考えられると思います。

 
 つくり手と流通の均衡(健全な取引関係)という意味では、目先の
 相手を見るばかりではなく、本質的(最終的)なユーザーとしての
 一般愛好家への供給責任を意識し、いかにユーザーが安心して選び
 購入し、楽しんで着るかという購入着用環境を整えることを目的に、
 そのための方法論として流通体制を考えるという意識変革を進める
 なかで新たなより良い関係のあり方が見えてくる様に考えます。

 きものの魅力に惹かれた一愛好家の立場から、なんとかユーザー/
 小売店/メーカーが連携しつつそれぞれの立場で活き活きときもの
 を楽しむ環境を作りたいと、30歳を過ぎてこの世界に飛び込んだ
 自由人として、今後、ユーザーへの供給責任を意識したメーカーの
 アクションを、期待したいという気持ちです。

               ◇

 上記が本質的なメーカーのあり方、理想論と考えるところですが、
 実際にこれを具現化していく課程(移行期間)においては、多くの
 難しい局面が出て来ようかと思います。

 長年に渡る既成構造から、あらたな体制を創り出して変化を遂げて
 行くには一時的な反作用も大きく、メーカー1社のアクションでは
 心細い面もあるやも知れません。

 変革の必要性を感じつつも背負う社員や家族のことを考え、成功の
 確証が見いだせない一歩を踏み出すことに躊躇を感じている経営者
 もいることと思います。
 しかし同時に、従来体制の継続の中からあらたな可能性を見い出す
 ことも出来ず、そこには危機的な未来状況のみが確証を持って見る
 ことが出来るというジレンマを感じていることと思います。
 

 そこで、あらたな方向性へのチャレンジということで想いを同じく
 するメーカー仲間が集い連携する中で、1社だけでは難しい変革を
 相互連携の相乗作用により力強い形で進めていきたいというのが、
 「きもの村」の目指すネット仲介センターであり、その連携ネット
 ワークのオルガナイザーという役割方向です。

               *

 メーカー仲間が集うことにより、製品のバリエーションと奥深さの
 面で集積力が高まり、それはユーザーへの訴求力となります。
 
 ユーザーは、どの様な商品があり、どんな価格で、どんな着こなし、
 コーディネイト、楽しみ方が出来るのか、トータルなラインナップ
 として体系的に見たい、その中から楽しみながら納得して選びたい
 という要望が強く、裏返して現状における不満となっていると思い
 ますので、この点の解決方向を示すという意味からメーカー連携の
 製品集積力は大きな意味合いを持つものと考えます。

 また、この様なメーカー連携によるユーザーに対する強い訴求力は、 
 同様に流通から見ても魅力のあるポイントとなりますので、同じく
 流通の立場からあらたな方向を目指して想いを同じくする仲間と、
 プロのメーカーとプロの流通という立場で互いに緊張感を持ちつつ、
 同時に信頼し合える安定的な健全関係を築いていく際のエッセンス
 になるものと思います。


 ここでひとたびメーカー同士の連携が進むと、それは更にメーカー
 と流通の健全関係へと発展し、ひいては恒常的にメーカー/流通/
 ユーザー3者が相互連携を図りつつ、もの作りの質、商品提案の質、
 着る楽しみの質を高めていく螺旋循環をもたらすものと考えます。

               *

 インターネットによるコミュニケーション環境の飛躍的充実、個人
 レベルでも容易に情報発信や情報収集、恒常的な双方向交流が可能
 となった現状は、企業規模の大きくないきものメーカーにも大きな
 チャンスをもたらしているものと思います。

 ネット流通の世界においては、「B to B」「B to C」といった言葉
 が聞かれ、Business to Business ということで「企業と企業」、
 Business to Consumer ということで「企業とユーザー」という
 流通戦略が注目されています。

 きものの世界に置き換えると、「メーカー企業と流通企業(問屋/
 小売店)との取り引き」「メーカー企業/流通企業とユーザーとの
 取り引き」という捉え方になります。

 しかし、今後はネット流通ならではの本質的な方向として、これら
 の統合形である「B to B to C 」=「メーカー/流通(問屋・小売
 店)/ユーザー」の三位一体となった連鎖(チェーン)体制が模索
 されるものと考えます。


 例えば、
  ・メーカーはもの作りの背景や、こんな形で着て欲しい、こんな
   場面でこんなコーディネイトに合わせるものとしてはこういう
   ものがある、今後はこういったものを創ってみたいと伝え

  ・ユーザーは、これにはどんな特徴があるのか、これとこれでは
   どんな着こなしの違いがあるのか、こういう場面でこんな風に
   コーディネイトして着るこういうものが欲しいと質問、要望し

  ・流通は、種々のメーカー提案を独自のセンス、得意分野により
   特色のある品揃えで店ならではの個性的な提案を行うと共に、
   メーカー/ユーザー両者の間で個別ニーズに見合う的確な提案
   をしたり、ニーズをフィードバックし以降のもの作り/品揃え
   に活かし、場合によってはオリジナル品の共同提案なども

 この様な形で、それぞれのプロが常時の交流を持ち、たまに3者で
 顔を合わせたりという会合等も含めてコミュニケーションを深めて
 いく中で…
 例えば色目等の面でも、なかなか各社間に統一感が見られず、他社
 メーカーのアイテム同士をコーディネイトするのに一苦労といった
 現状から、今後は、各メーカーがそれぞれの感性で色づくりを行い
 つつも、ある一定の共通理解を持つ事により他社製品同士の間でも
 バランスが見られコーディネイトもしやすくなるといった方向で、
 クリエイティブベースの共有、相互刺激のベルアップが有効に機能
 して連携効果が現れたりと…
 結果として、メーカーにとってもの作りの質/楽しみを高め、流通
 にとって商いの質/楽しみを高め、ユーザーにとっては着る楽しみ
 /質を高めていく様な相互関係を築いていければ、そこには必ずや
 素晴らしい恒常的な好循環が生まれてくることと思います。

 ネットはこの様な実際的な関係づくりの手段として、大きな役割を
 果たすことと思いますし、恒常的なコミュニケーション/関係性の
 仕組みとして“場・集まり”を捉える「コミュニティ」という概念
 は、今後あらたなユーザーと供給側との関係性として重要となり、
 様々な方向が模索されていくものと考えます。
 

 「きもの村」では、きものにおける「B to B to C コミュニティ 」、
 トータルな連携相互作用体制により、メーカー/流通/ユーザーが
 それぞれにきものを楽しむ事を共通目標にその質を高めていく様な
 螺旋循環ネットワークを築いていきたいものだと考えています。

               ◇

 西洋には「ノブレスオブリージュ」、高貴なるものの役割・責任と
 いう様な意味合いの言葉があります。
 貴族社会において、その高い地位と影響力には自ずとそれに見合う
 役割・責任が生ずるという認識と、その重い役割・責任を全うする
 気概を持つ貴族自身のプライドとともに語られる言葉と思います。

 日本においては、自らを高貴なるものと位置づけ表明するセンスに
 少々の違和感を覚えるところと思いますが、同じく武士という地位
 にあって歴史に対する影響力をもつものとして、その判断行動には
 責任が有するという意味での自負と責任感は、「武士道」の精神に
 共通性が見いだせるものと思います。

 この点で、西洋の貴族主義を背景としたダンディズムと日本武士の
 凛とした価値観とは同調し、それぞれに誇るべきエスプリを現代に
 問いかけている様に思えます。

               *

 この様な和の価値観、凛とした男性の美意識を備えた伝統の衣装で
 あるきものを、今の時代の解釈で咀嚼し昇華継承していくことは、
 現代に生き、きものづくりに携わるメーカーとしての役割、責任と
 いえるのではないでしょうか。

 また、未来への新秩序づくり、歴史変革への影響力という点では、
 各産地、各分野のリーダーを自負するメーカーこそが率先して次の
 アクションを起こす役割と責任を有するものと考えます。

 
 今こそトップメーカーとしての自負を持ったもの同士の連携による
 強者連合により、21世紀の豊かなきもの着用環境をあらたに創り
 出していくチャレンジをする時機と考えます。

 各産地の想いを同じくするメーカーのみなさんとともに、あらたな
 方向を見いだして行きたいと考えています。

 まずはメールにより第一歩の交流、コラボレーション(共同創造)
 を進めていきたいと考えています。
 熱い想いのコンタクトをお待ちしております。
 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 3 その他
 
 「凛」という言葉は大好きな言葉で、日本におけるダンディズムを
 一言で表すとすれば私はこの言葉を思い浮かべます。

 洋装の場合も同様ですが、装い、スタイル(流儀)においては表面
 的なファッション要素の他に、根本部分に各人の美意識や価値観が
 現れるものと思います。
 
 例えばきものにおいて、町衆の自由で気取らない発想、機微を表現
 する着流しの“粋”スタイルと対比させて武士の袴姿を見るならば、
 それは“凛”スタイルとなる様に思います。

 今号で長々とお話しさせていただきましたが、私の場合の根本的な
 価値観は“凛”スタイルです。
 
 基本的にこのスタイルは変わりませんので、“粋”スタイル派の方
 には少々違和感のある捉え方、ご案内をする場面もあろうかと思い
 ます。
 こういった場合は、偏りを修正して“粋”派のスタイルで読み直し
 ていただければ幸いです。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================
   
  
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は321通(メールアカウント)でした。

 
[36] 長根英樹 メールマガジン - No.0010 -2000.04.16 号
 1 お花見の単衣羽織
 2 国際的なフォーマルスタイル
返事を書く
    2000.04.16 20:15

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.04.16 No.0010  配信数:0311  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 お花見の単衣羽織
 2 国際的なフォーマルスタイル
 3 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 お花見の単衣羽織

 南北に長い日本。東京、西、南の方面では桜も終わり、そろそろ袷
 から単衣への更衣(ころもがえ)に心そわそわの時季と思います。
 ゴールデンウィーク、お天気のよい日には夏の陽気となりますので、
 6月を待たずひと足先に単衣に袖を通したくなりますね。

 こちら米沢では防寒コートを脱ぎ羽織姿で軽快に出掛けられる様に
 なりましたが、桜はまだつぼみ。花の見頃は月末になると思います。

 お花見時季は一日の気温差が大きく、日中は陽が射すとかなり暖か
 くなる反面、夕方からは意外と冷えて、着るものにも気を使います。
 こんなときにお薦めなのが、単衣の羽織です。

 袷の長着に羽織で温度調整。
 男性のきもの姿の場合、洋服におけるジャケットと同様に羽織には
 身支度を整える意味合いがありますので、オン/オフの切り替えに、
 また肌寒くなってきた際の重ね着用に、単衣羽織は重宝するものと
 思います。

 もちろん、その日の体調や天候によっては裏地のついた袷の羽織が
 安心の場合もありましょう。
 女性の場合は羽織の他に、スプリングコートのような感覚で中丈の
 紗や絽素材等の透け味の少ない薄ものコートなども風情あるものと
 思います。


 さて月末の花見会合。
 どのきもの(長着)にどの羽織を合わせようか。半襟、帯、袴は…
 着る前のコーディネイト思案、これも装いの大いなる楽しみですね。

 きものの場合は、日本の気候、行事/慣習、ひいては長年育まれて
 きた価値観や美意識に基づく素材、意匠等クリエイションの蓄積が
 ありますので、洋装とは違ったコーディネイトの奥深さが味わえる
 ものと思います。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 国際的なフォーマルスタイル
 
 このところ英国ダンディスタイルにこだわりを持つジェントルメン
 との会合や、講演で来県した外務省の方のプライベートな訪問など
 インターナショナルな装いに関心を持つ方との交流の機会を得て、
 なにかしらムーブメントの様なものを感じているところです。

 国際的なフォーマルスタイルといえば、夜の準礼装ブラックタイ
 (タキシード)&正礼装ホワイトタイ(テイルコート:燕尾服)、
 昼の準礼装ディレクターズスーツ&正礼装モーニングコート(古典
 スタイルとしてのフロックコート)が一般的に言われるところ。
 正礼装のテイルコート、モーニングコートの用意まではなくても、
 タキシードについては一揃いを用意されている方も多いことと思い
 ます。

 外交官や海外在住の企業幹部、あるいは頻繁に海外出張される方に
 とって、タキシードはある種“フォーマルの制服”の様な必需品に
 なっていることと思います。

 一方でタキシードとは別に、もっと積極的に装いによって自国の、
 あるいは個人としてのアイデンティティ、パーソナリティ、価値観、
 美意識、蓄積を表現するのがふさわしい場面が増えてきている様に
 感じるとともに、そういった“装いのプレゼンテーション効果”に
 関心を持ち活用されようとしている上記ムーブメントを感じている
 ところです。


 海外ブランド品も含めて洋装で培ったファッションセンス、独自の
 こだわりを活かし、いかに国際的なフォーマルスタイルとして和装、
 きものを自分のスタイルとして装うか。
 こういった流れの中で、装う側もつくり手(供給)の側も相互刺激
 により質、楽しみを高めていくものだと思いますので、今後の展開
 を楽しみにしているところです。

               ◇

 さて国際的なフォーマルスタイルといえば、今夏の沖縄サミット。
 各国トップリーダーの“装いのプレゼンテーション”という面でも
 注目されます。

 日本のリーダーとして現総理大臣がホスト役を務めるとするならば、
 和装議員連盟会長でもある森喜郎首相、世界に対してどの様な形で
 和の価値観、スタイルをプレゼンテーションしまとめ上げるものか、
 大いに注目したいところです。
 

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 3 その他
 
 上記2とも関連しますが、「ブッチホン」で有名な小渕前首相。
 その気配り、フランクなコミュニケーションの姿勢は電話のみなら
 ず、「ブッチメール」?においても同様でした。

 首相官邸のホームページを通じ、サミットでの和装スタイルに関し
 ポストしたところ、首相個人名(内閣総理大臣 小渕 恵三)にて
 返信メールがあり“人柄の小渕”を実感したところでした。

 歴史に“もし”はないのでしょうが、小渕首相がホスト役を務める
 沖縄サミットを見てみたかったと切に思います。
 小渕前首相の快癒をお祈りいたします。

               ◇

 ゴールデンウィークの楽しいスケジュールでわくわく気分のことと
 思います。
 だいぶ暑くなる様だと単衣の長着に絽の羽織などでもいいかも知れ
 ませんね。
 かつては“ヒゲ糸”を織り込んだ絽着尺もあった様で、こんな時の
 羽織にはぴったりだったことと思います。

 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================
   
  
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は311通(メールアカウント)でした。

 
[35] 長根英樹 メールマガジン - No.0009 -2000.02.29 号
 1 紬織物
返事を書く
    2000.03.01 09:21

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.02.29 No.0009  配信数:0310  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 紬織物
    ・真綿紬(まわたつむぎ)
    ・玉紬 (たまつむぎ)
    ・紡績紬(ぼうせきつむぎ)
    ・その他の紬
 2 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 紬織物

 日常の気軽な装い、あるいは趣味の凝った装いとして人気の高い紬
 織物(つむぎおりもの)。
 一般に紬といえば、「屑繭(くずまゆ)から糸を取った、節(ふし
 :ネップ)があったり、毛羽(けば)感の感じられる、素朴な表情
 が特徴の織物」ということになろうかと思います。

 しかしながら、一口に“紬”といっても、織の表情、着味等の面で
 様々なタイプの織物がありますので、今号では主に糸に着目をして
 紬織物の種類についてご案内をいたします。

               ◇

 「真綿紬糸(まわたつむぎいと)」
 繭を煮て柔らかくなったところを薄く引き伸ばし重ねフェルト状に
 した“真綿(まわた)”から引いた糸です。
 繭から直接引いた糸を数本束ねた糸とは違い、フェルト状になった
 ところから繊維をまとめて引き出していますので、繊維同士の絡み
 合いにより凹凸感や毛羽感のある素朴な風合いの糸となります。

 糸の引き方は、結城紬(本場結城紬)に見られる様に指先にツバを
 付けながらつまみ出して行く方法の他、回転式の糸車を用いて引く
 方法等があります。
 結城紬の場合、熟練の引き手が引いた糸は細く均一であまり大きな
 節(ネップ)は見当たりません。

               *

 「玉糸(たまいと)/座繰り糸(ざぐりいと)」
 2匹(まれにそれ以上)の蚕が一緒になって作った大きな繭を玉繭
 (たままゆ)と呼びます。
 この玉繭は、複数の蚕が吐いた糸が複雑に絡み合っているため機械
 で糸引をする事ができません。
 そこで、繭を煮て、柔らかくほぐれてきたところを数個分まとめて
 手引きによって糸取りをする方法、すなわち鍋の前で座りながら糸
 を繰る“座繰り(ざぐり)”の手法によって引かれます。

 糸の絡み具合によって所々に節(ネップ)が出来ますが、それ以外
 の部分はすらりとした長繊維の糸であるため、繊維を絡ませて引く
 上記の真綿紬糸とは違った光沢感が特徴の紬糸となります。

 ※座繰り手法による糸引きは玉繭だけに用いられる手法ではなく、
  時に1匹の蚕が作ったきれいな繭である“中繭(なかまゆ)”に
  おいても用いられることがあります。
  中繭の座繰り糸は、節の(ほとんど)ないすらりときれいな生糸
  となりますので、紬糸とは別の表情となります。
  人の手により自然に糸引きされますので、一般的な機械引きの糸
  とは違い張力(テンション)の面での負担が少なく、糸に弾力の
  残る風合いがあり、織味にこだわる場合などに用いられます。

               *

 「紡績紬糸(ぼうせきちゅうし)/絹紡糸(けんぼうし)」
 屑繭を細かく砕き、機械紡績により紡いだ糸です。
 繊維が絡み合っていることから、上記の真綿紬糸風の毛羽感が感じ
 られますが、微妙な“ほっこり感”の面で風合いに違いが見られる
 ことと思います。

 一般に、リーズナブルな紬アンサンブル等で用いられますが、紡績
 の仕方により糸の表情は様々で、極細の生糸風合いのものもありま
 すので、用途/製作意図により多様な織り表現がなされています。

               *

 紬織物は通常、上記3種類の紬糸とすらりと節のない生糸(絹糸)
 により織り上げられています。
 例えば、経緯(たてよこ)全ての糸に真綿紬糸を用いて、真綿紬糸
 1種類のみで織られるもの。
 経糸には絹糸、緯糸には玉糸、あるいは紡績紬糸を用いたもの。
 経絹に真綿紬糸と紡績紬糸を交互に織り込んだものなどがあります。

               ◇

 「真綿紬(まわたつむぎ)」
 結城紬(本場結城紬)に代表される紬織物で、経緯に真綿紬糸が用
 いられている紬です。
 熟練の手引きによる細く均一な真綿紬糸を用いた結城紬は、表面の
 毛羽感とほっこりやさしい風合いが感じられるものの、洋装素材の
 ツイードの様な節(ネップ)の目立つ紬とは違った表情となります。

 この他、経に絹糸を用い、緯に真綿紬糸を織り込んだ紬、あるいは
 経に絹糸、緯に紡績紬糸と真綿紬糸を織り込んだ紬についても、
 “真綿紬糸を用いた紬”として真綿紬と呼ぶ場合もあります。
 この場合には、用いる真綿紬糸の分量等により大分織味も変わって
 来ます。

 また、通産省認定の伝統的工芸品としての結城紬(本場結城紬)と
 は別に、“結城地方(茨城方面)で織られた紬”の場合には、全く
 真綿紬糸を用いない紬織物もあります。
 認証ラベルも違いますので、求める場合にはよく織の特徴を聞いて
 それぞれの手触り、地風の違いを吟味の上、お好み、用途に合わせ
 て選ぶことが大事だと思います。

               ◇

 「玉紬(たまつむぎ)」
 牛首紬(白山紬)等に代表される紬織物で、玉糸が用いられている
 紬です。
 節糸織(ふしいとおり)と、真綿紬と区別して呼ばれることもある
 織物です。

 長繊維糸による光沢感、すっきりとした表情が特徴で、真綿紬との
 大きな違いとなります。

 こちらも経緯に玉糸を用いたものの他、経に絹糸で緯に玉糸を織り
 込んだもの、絹糸と玉糸を交互に織り込んだものなどがあります。

 一般に、紬というと「結城紬」「大島紬」について語られることが
 多く、あまり注目度の高くないジャンルの紬と思いますが、光沢感
 とネップの表情の魅力深い織物で、個人的にも袷、単衣と同じもの
 で揃えているお気に入りの紬です。
 単衣の紬としては、真綿の温かみとは違ったスッキリ感が馴染み、
 重宝する織物だと思います。

               ◇

 「紡績紬(ぼうせきつむぎ)」
 紡績紬糸が用いられている紬です。
 男性用のリーズナブルな紬はこのタイプが主流と思います。

 一般に、経糸に絹糸を用い、緯糸に紡績紬糸、あるいは紡績紬糸と
 真綿紬糸、玉糸、絹糸などが織り込まれることが多いと思います。

 経糸にすらりとした絹糸を用いるのは、織り易いという意味合いも
 ありますが、経緯紬糸のものと比べ(経の絹糸の分)光沢感が生ま
 れますので、毛羽や節のある素朴な(ある意味で野暮ったい)紬と
 は一味違う洗練された感覚の紬を目指す製作意図が背景にある場合
 もあります。

               ◇

 「その他の紬」
 先に、「屑繭(くずまゆ)から糸を取った、節(ふし:ネップ)が
 あったり、毛羽(けば)感の感じられる、素朴な表情が特徴の織物」
 とのことで紬織物をご紹介しましたが、他に紬糸を用いていなくて
 も「各地域の伝統的な技法を用いた素朴な味の織物」という幅広い
 紬織物の捉え方もあろうかと思います。

 その代表が「大島紬」です。
 現代の大島紬は、基本的に経緯に絹糸が用いられていていますので、
 紬糸が用いられた織物という意味での紬ではありません。
 地風も一般の紬とは趣を異にする滑らかさが大きな特徴となります。

 かつては紬糸が用いられた織物で、まさに大島の紬だったのですが、
 絹糸を用いる現代においてもその名残から大島紬と呼ばれています。
 紬糸を用いない点を区別する意味で、紬をつけずに「大島」とだけ
 呼ぶ場合もありますが、地元の織物組合の正式名称は「大島紬」と
 なっています。

 「紬」をどう定義するかの問題は置くとして、大島紬は絣による柄
 表現や泥染めによる地域色の感じられる素朴な味のある織物です。
 私も秋口の最初の袷には、毎年大島紬が着たくなり、軽く滑らかな
 地風を楽しんでいます。

 もっとも紬糸を用いず、絣の細かいものについては極細の糸を用い
 泥染めの繰り返しにより糸をしなやかにしていますので、紬織物の
 特徴としていわれる丈夫さの面では意味合いが違うものと思います。


 「大島紬」の他、「黄八丈(黒八丈/鳶八丈等)」についても絹糸
 を用いたものでも紬と分類される場合がありますが、上記「各地域
 の伝統的な技法を用いた素朴な味の織物」という意味合いで用いら
 れているものと思います。

               ◇

 この他に、織物の地風は、
  ・撚  :撚(より)が強いか、弱いか。
       糸飛び(ヒゲ)、団子状の変わり撚が施されているか。
  ・織  :経糸緯糸の交差法則。
       平面的な織表情か、立体感のある表情か。
  ・整理 :織上がり後の工程で、シボを出したり、引き締めたり。
 といった部分でも違ってきます。

 また、全体の表情ということでいうと、
  ・色柄
  ・仕立て
  ・コーディネイト/着こなし
 等によってもずいぶんと印象が違ってきますので、時と場面に応じ
 自分の気持ち、スタイルにあったものを選び、装う楽しみは、非常
 に奥深いものと思います。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 その他
 
 2月は風邪をひいて体調を崩したこともあって、今号のみの発行と
 なりました。
 今後は、少し発行間隔を空け、月に1回ほどのペースでお送りする
 ことといたします。

 2月の中旬以降雪が続き、積雪1mを越えた米沢。
 まだ春は遠い様です。

 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================
  
  
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は310通(メールアカウント)でした。

 
[34] 長根英樹 メールマガジン - No.0008 -2000.01.31 号
 1 冬の装い 〜 防寒の工夫(2)
返事を書く
    2000.01.31 16:10

 ◆◇ 御召 ◆ 紬 ◇ 着尺 ◆ 羽織 ◇ 袴 ◆ 帯 ◇◆
 ――――――――――――――――――――――――――――――
       【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

        2000.01.31 No.0008  配信数:0305  
 ――――――――――――――――――――――――――――――
 ◆ ◇ ◆ きもの村 http:// www.kimono.gr.jp/ ◆ ◇ ◆


≪≪目次≫≫

 1 冬の装い 〜 防寒の工夫(2)
    ・羽織
    ・羽織下(はおりした)
    ・袴
    ・ストール・マフラー等
    ・角袖コート
    ・インバネスコート(とんび)
    ・その他のコート(道行、マント等)
    ・雪下駄・雪草履/ブーツ等
    ・その他
 2 その他

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 1 冬の装い 〜 防寒の工夫(2)

 前号に引き続き「冬の装い 〜 防寒の工夫」についてのご案内。
 今号では、きもの(長着)の上から用いるアウターの装いについて
 ご案内をいたします。

               ◇

 「羽織」
 羽織は、コートと違って室内で脱ぐ必要がなく、洋装のジャケット
 感覚で着用できますので、ベーシックな防寒のアイテムとなります。

 秋冬は、裏地(羽裏)をつけた袷仕立てが一般的で、表地の裾部分
 の折り返し+羽裏の2重構造で温かいものですが、以前は更に防寒
 に特化した綿入れ仕立ての羽織もあった様です。

 現在でも、丈を長くした長羽織スタイルにしたり、羽織を2枚重ね
 て着る羽織の襲(かさね)などの工夫により、手軽に防寒の装いが
 できます。

 少し肌寒い程度の初冬や、コートが大げさに感じられる場面では、
 長羽織をコート感覚で用い、羽織の上から重ねる着方がお薦めです。
 防寒専用の羽織を、ウールなど温かく手入れの容易なリーズナブル
 素材で作っておくと、ストール、手袋等とあわせベーシックな防寒
 スタイルになると共に、不意の雨雪等でも安心です。

               ◇

 「羽織下(はおりした)」
 羽織下は、長着の上、羽織の下に着るもので、袖無しの陣羽織の様
 なデザインの防寒着。
 イメージは出来るのですが、実際に現物を見たことはありません。

 綿入れの羽織でなくても温かく着られる様に、袖無しで動きやすい
 ものを中に一枚着重ねるという工夫と思います。
 羽織を着用した際、表から目立たない様に、前幅は広くなく、衿も
 あっさりと細衿です。

 素材は滑りの良い羽裏や胴裏等を使ったもの、仕立ては綿を入れた
 仕立てが多かった様です。

 軽くて動きやすいことから、家庭での気軽な防寒着の役割もあった
 ことと思います。

 こういった日常の細かい工夫は、どんどん世代伝承が難しくなって
 いますので、途絶えないうちに受け継いでいきたいものだと考えて
 います。
 ご案内の足りない点、その他の工夫等、羽織下に限らずお気付きの
 点をお聞かせいただければ幸いに存じます。

               ◇

 「袴」
 袴を防寒のアイテムとしてイメージされる方は少ないかも知れませ
 んが、日常的に袴をお召しの方はその温かさを実感されていること
 と思います。

 現在、袴の仕立ては夏冬を問わず裏地を付けない単衣仕立てがほと
 んどですが、かつては裏付きの袷仕立て、あるいは綿入れ仕立ても
 あったとの事。

 袴は、夏に透ける素材のものも着用しますので、防寒だけの意味を
 持つものではありませんが、着用して温かいことは確実です。

 袴を付けない着流しスタイルは、ロング巻スカートを着用している
 のと同様となりますので、男性にとっては新鮮な開放感が味わえる
 反面、冬はスースーと風を感じることとなります。

 「ズボンとスカート、どちらが温かい?」と問うまでもなく、袴は
 長着の上に+αとして着用しますのでそれだけでも温かくなります。
 スカート状の「行灯袴(あんどんはかま)」と、股の分かれた「馬
 乗り袴(うまのりはかま)」では、馬乗り袴の方が風の侵入を防い
 で温かくなります。

 また、更に裾をスリムにしてズボン状のスタイルとした「野袴(の
 ばかま)」等の袴は、一段と温かくなります。
 その活動性と共に、温かさという意味でもお薦めのアイテムです。

 画像等詳しくは、ホームページにてご確認下さい。

 「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
  ・大人の男のきもの談義
   No.2 オン・ビジネスの装いとしての袴スタイル
  http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

               ◇

 「ストール、マフラー等」
 襟元の防寒という意味で、手軽でありつつ、風の侵入を防いで随分
 と温かさのます重宝なアイテムが、ストール、マフラーなどです。

 コートを着用する際の、襟元の汚れ防止になるとともに、コーディ
 ネイトのアクセントにもなりますのでお薦めのアイテムです。

 コートを着用しないで羽織だけの時でも、一枚を襟元に巻くだけで
 温かさは違ってきます。
 軽くかさばらないで持ち運びも容易なので、旅行の際などでも重宝
 することと思います。

               ◇

 「角袖コート」
 洋装のシングルコート(ステンカラーコート)の袖を角形にした様
 なデザインの、一般的な男性用和装コートです。

 襟の形は、へちま襟や背広襟(テイラードカラー)等いくつかバリ
 エーションもありますが、見た目におとなしい、オーソドックスな
 スタイルですので、場所を選ばず、安心してお召しいただけます。

 素材は、一般的なウールの他に、凝った絹素材のものもあります。
 真綿紬糸を用いた綾織のタイプ、網糸を用いたヒゲ素材のタイプ、
 お好みの生地を見つけ誂えるのも楽しいことかと思います。


 画像等詳しくは、以前織元勤務時代、地元新聞に連載していた特集
 の再録ページがありますので、こちらにてご確認下さい。

 「米沢織 織元 鈴源織物」ホームページ 男のきもの
  ・米沢日報連載「シリーズ 再発見 − 米沢織 きものの魅力」
   No.9 冬、角袖コート雪道のスタイル
  http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/ men/ 02e9802.html
  http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/ men/ 02c005.html 参考

               ◇

 「インバネスコート(とんび)」
 イギリス、スコットランド北部地方のインバネス(Inverness)の
 地名から名付けられたケープ付きコートで、シャーロックホームズ
 の装いでも馴染みのあることと思います。
 
 イギリスでは、袖のあるタイプ、無いタイプ両方のスタイルがあり
 ますが、日本には幕末から明治にかけて輸入され、袖無しのタイプ
 が「とんび」の愛称で広く用いられるようになりました。
 大正、昭和の時代でも、文士や書生などのスタイルとしてお馴染み
 のことと思います。

 肩から袖にかけて全体を覆うケープには、袖から前部分のみを覆う
 タイプの他に、背中も含めて一回りするタイプもあり、このタイプ
 でケープ丈が長いものを「二重廻し(にじゅうまわし)」と呼んで
 いた様です。
 現在では、背中も含めて一回りするタイプのケープが付いたものは
 ほとんどありませんので、デザイン上の区別は無しに、ケープ付き
 の袖無しコートを総じて「インバネス」「とんび」「二重廻し」と
 呼んでいる状況と思います。

 かつてのイギリスの袖無しインバネスの袖繰りが、どの程度の大き
 さだったのか存じませんが、日本においてきものの袖の出し入れが
 容易な様に広められた可能性もあると思います。
 いずれにしても、現在のデザインは袖繰りが大きく、非常に着脱の
 容易なスタイルとなっています。

 素材は、一部に絹地もありますが、ウール系(カシミア等)が主流
 で、色は黒、チャコールグレイがほとんどと思います。

 見た目のインパクトが強く、個性的なコートスタイルになりますが、
 デザインの新鮮さ、ケープの流れるシルエットのエレガントさから
 近年非常に人気が高く、きものに限らず洋装(スーツ等)において
 も着用が広がっています。


 画像等詳しくは、以前織元勤務時代、地元新聞に連載していた特集
 の再録ページがありますので、こちらにてご確認下さい。

 「米沢織 織元 鈴源織物」ホームページ 男のきもの
  ・米沢日報連載「シリーズ 再発見 − 米沢織 きものの魅力」
   No.6 コートのお洒落、インバネススタイル
  http:// www.omn.ne.jp/ ~suzugen/ men/ 02e9711.html

               ◇

 「その他のコート(道行、マント等)」
 その他のコートとしては、女性の長コートの様な、四角に開いた襟
 デザインの道行コートもありますが、現在ではほとんど見かけない
 スタイルと思います。

 男の道行コートスタイルというと、住職や易者の装いがイメージさ
 れ抵抗があるかも知れませんが、お茶の方などで色のものを上品に
 着こなしている方もいらっしゃる様です。

 丈の長いコートは、防寒の他に雨コートとしてもニーズがあります
 ので、襟、打ち合わせのデザインをリファインさせ現代の長コート
 として復活させたいものだと思います。


 その他、上記のインバネスとは別に、胴とケープが分かれていない、
 長いケープのみの一枚布タイプで羽織るだけのマントもありますが、
 既製品は見当たらず、誂えになることと思います。

 こちらも非常にエレガントなものですので、絹地でフォーマル用に
 作っておくと、非常に贅沢な装いが出来るものと思います。 

               ◇

 「雪下駄、雪草履/ブーツ等」
 履物における防寒の工夫としては、爪部分に覆いのついた雪下駄、
 雪草履が一般的と思います。

 こちらは、底がスパイク状のデコボコになっていますので、うっす
 ら積もった程度の雪ならば重宝することと思います。

 もっとも、米沢の様に降り積もる雪では用を足しませんので、日常
 的な装いの場合は、ズボンタイプの野袴にブーツや長靴を用いてい
 ます。
 フォーマルな場面では、車移動が主となり、会場で履き替えるのが
 一般的になります。
 
 ホテル等の会場では、下駄は制限されることがありますが、雪草履
 は道中に限らず着用が可能な履物になります。

               ◇

 「その他」
 きもの(長着)の上から用いるアウターの装いということで、防寒
 の工夫をご案内して参りましたが、長着自体の防寒の工夫としては、
 仕立ての面で綿入れ仕立てがあります。

 「四月一日」と書いて「わたぬき」さんという苗字の方もいらっしゃ
 いますが、かつてはこの時季に綿を抜いて袷仕立てのものに替えた
 とのこと。
 同じ冬の装いでも、袷と、綿入れを使い分けていた様です。

 現在では、家庭で容易に仕立てが出来る状況ではありませんので、
 着用時季の限られる綿入れを仕立てる方は少ないかも知れませんが、
 寒い地域で真冬専用ということでしたら、綿入れの長着も味のある
 ものかも知れません。

 長着とは別に、家庭着としての丹前(たんぜん)や半纏(はんてん)
 は、綿入れ仕立てで温かい寛ぎ着になることと思います。


 仕立ての他に、素材の工夫ということでは、「秋大島に春紬」等と
 いう言葉がある様に、冬には温かい真綿紬系のきものが着たくなり
 ます。

               ◇

 前号、今号と、きものの冬の装い 〜 防寒の工夫というテーマにて
 ご案内して参りました。

 先人の工夫、創造の蓄積を、フォーマルなど形式的な部分だけでは
 なく、日常的な部分のちょっとした工夫などについても受け継ぎ、
 残していきたいものだと考えています。

 また、読者の皆さんも、様々な工夫で冬のきものを楽しんでいらっ
 しゃることと思います。
 オリジナルの工夫やヒントについて、メールや掲示板などでお寄せ
 いただければ幸いに存じます。

 バックナンバー&交流掲示板は、ホームページにて。

 「きもの村」ホームページ 男のきもの・織のきもの
  ・大人の男のきもの談義
  http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 2 その他
 
 1月に入っても穏やかな日が続いていた米沢ですが、2月を目前に
 じょじょに冬らしく、雪が降り積もって来ました。

 今はブーツでも大丈夫ですが、もっと積もると長靴できものという
 スタイルになります。
 裾をスリムにしたズボンタイプの「野袴」は、防寒の意味合いと共
 に、きもの姿で長靴を履けるという、米沢の冬のきものスタイルに
 欠かせないキラーアイテムとなっています。

 もっとも、米沢でも真冬にきもの姿で出歩く人は少なく、ごく1名
 のキラーアイテムというのが、正確なところの様ですが。


 みなさんからご意見、ご感想をいただければ幸いに存じます。 


                   きもの村 村長 長根 英樹

――――――――――――――――――――――――――――――――
  メールマガジン 【男のきもの】製品・価格・着こなし紹介

  発行責任者 きもの村 村長 長根 英樹 HIDEKI NAGANE   

          webmaster@kimono.gr.jp       
          http:// www.kimono.gr.jp/  

  バックナンバー http:// www.kimono.gr.jp/ home/ salon.html

  まぐまぐID:0000021262

  掲載記事の転載を禁じます。
  Copyright (C) H.Nagane. All rights reserved.
――――――――――――――――――――――――――――――――

================================
 このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐまぐ』を
 利用して発行しています。

 登録・解除は、『まぐまぐ』(http:// www.mag2.com/)ページ
 ID:0000021262 にて。

 あるいは、きもの村 - メールマガジンページにてお願いいたします。
 (http:// www.kimono.gr.jp/ home/ magazine.html
================================
  
  
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 ここまで 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 この号の配信実数は305通(メールアカウント)でした。

 

|←最初←前ページ新規メッセージ登録タイトル一覧次ページ→最新→|

Copyright きもの村         E-mail:webmaster@kimono.gr.jp 
  :1999年10月 1日   更 :2002年10月 1日
                          


WebNote Clip ライセンス取得/設置 長根英樹